2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540216
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
飯田 雅人 宮崎大学, 工学部, 教授 (00242264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 広和 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (90251610)
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Keywords | 関数方程式 / 応用解析 / 非線形現象 / 反応拡散系 / 漸近解 |
Research Abstract |
反応拡散系は複数の成分の拡散と非線形相互作用を表す連立偏微分方程式である。反応拡散系には、非線形項の形やパラメータの値によっては特徴的な形状をした解が存在することが、既存の多くの数値実験から示唆されている。本研究では、これら諸々の特徴的な形状をした解のうち、角遷移層(解の勾配が急激に変化する薄い層)や内部遷移層(解の値が急激に変化する薄い層)を持つ解などに対して、その形状を精密に近似する漸近解の理論的な構築手法の確立を目指している。 平成25年度は、競争関係にある2種の生物個体群を記述する反応拡散系について、角遷移層の外側での漸近解候補である自由境界問題の解に対して自由境界の正則性を詳細に調べ、その結果を24年度に得た角遷移層内での様々な精度での局所的な漸近解に対する上下からの精密な評価と照合し、外部漸近解とうまく接合できるために内部漸近解に必要な近似精度を見積もった。 一方、本研究課題の研究目的の一つである多段階侵入型解が持つ内部遷移層、及び、上記競争2種の反応拡散系に見られる角遷移層に対し、それらの漸近的な特徴を深く理解するための別の視点からの考察として、上記競争2種の反応拡散系の種間相互作用と拡散の構造のみを抽出・一般化した反応拡散系の角遷移層・内部遷移層の挙動を調べた。特に、その反応拡散系の相互作用の次数のさまざまな値に応じて、角遷移層・内部遷移層の挙動が変化する諸相を詳細に調べてみた。その結果、遷移層の移動速度が相互作用の次数に応じて変化する様相の大枠が明らかになった。極端な場合として、遷移層が静止したまま移動しないような次数、及び、遷移層の移動速度が速すぎて遷移層が(無限遠方に消え去ってしまうため)見えないような次数を、特定した。この成果については、京都大学数理解析研究所での研究集会(平成25年10月)で発表し、研究計画の今後の進展に役立つ種々の助言を戴いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
角遷移層を持つ解の解析は、「研究実績の概要」で述べたように計画通り進展しているが、ここまでの成果を整理し、報告・論文にまとめるのはこれからである。 一方、内部遷移層を持つ解の解析に関しては、当初の計画では、多種協調拡散系における多段階侵入現象を近似する漸近解の理論的な構築を目指していた。これまでに、上側から局所的に近似する漸近解の構築の目途までは立てることができた。しかしながら、下側から局所的に近似する漸近解の構築を試みている途中で、多次元空間におけるFisher-KPP方程式の解の形状に関する詳細な性質を再検討して利用する必要に迫られた。そのために、関連する多数の文献を読み込み、Fisher-KPP方程式の解の形状に関する情報のうち、多段階侵入型解を局所的に下側から漸近する近似解を構築する糸口になると期待される諸性質を見極めるために、研究分担者とともに検討を重ねている。しかしながら、検討と整理に予想以上に時間がかかり、未だ成果には至っていない。この点で、当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
角遷移層型解の漸近解構築に関しては、平成24年度及び平成25年度の成果を整理し、報告としてまとめる。さらに、ここまでの成果に基づき、適度な精度の内部漸近解を外部漸近解と接合することを目指す。 一方、内部遷移層型解である多種協調拡散系の多段階侵入現象の解析に関しては、平成25年度に引き続き、多次元Fisher-KPP方程式の解の形状に関する諸性質を研究分担者とともに精査し、特に多次元単発侵入型解の存在証明を支える理論の本質を整理する。それを基に、多段階侵入を下側から局所的に近似する漸近解の構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、研究分担者との研究連絡を密にとることはできたが、「現在までの達成度」の理由欄に述べたとおり、研究連絡する前準備として、多次元Fisher-KPP方程式の解の形状に関する詳細な諸性質を整理する作業が必要になり、この作業に予想以上の時間を費やしたため、予定していた研究連絡(出張)の機会を数回失わざるを得なくなった。それに該当する旅費が未使用のままである。 平成26年度には、研究代表者・研究分担者間で、下側からの局所漸近解の構築方法についてのアイデアを交換して検討する時間を充分に設け、多段階侵入型解を下側から近似する漸近解の構築を目指す。そのための研究連絡(出張)が充分にできるよう、平成25年度に未使用だった旅費を平成26年度旅費と併用して活用する。
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Research Products
(3 results)