2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540220
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山田 義雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20111825)
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Keywords | 非線形現象 / 反応拡散方程式 / 自由境界問題 / 数理生態学 / ロジスティック方程式 / 非局所項 / 正値定常解 |
Research Abstract |
反応拡散方程式に関する研究として取り組んだテーマの一つが数理生態学分野に現れる自由境界問題の研究である。この問題は生息領域の境界(または境界の一部)が自由境界となる環境下で生息している生物種の個体数密度の変化を扱う問題である。個体数密度の変化は、ロジスティック型あるいは双安定型の反応項を伴う拡散方程式で記述される。また自由境界の運動は個体数圧力によって支配されると仮定すると、Stefan型の自由境界条件で記述される。このような自由境界問題に対応する具体的モデルとしては、新しい生物種(外来種)が生息領域を求めて新環境に侵入し、勢力拡大を図る侵入モデルが考えられる。生物種の侵入をモデルとする数理モデルは2010年に Du-Lin によって提起され、活発に研究され始めた。我々の研究グループでは、空間次元が1の場合に一般の反応拡散方程式に対する自由境界問題の解の挙動について、「生物種の繁栄(spreading)」と「生物種の絶滅(vanishing)」を定義し、どんな解も「繁栄」か「絶滅」のいずれ一方のみをみたすという二者択一定理が成り立つことを示していた。2013年度はこの結果を一般空間次元に拡張し、初期条件が球対称という仮定の下、やはり二者択一定理が成立することを示した。さらに、ロジスティック型の反応項を伴う方程式に対しては、解についてより詳しい性質を示し、いかなる条件の下で「種の繁栄」が起きるか、あるいは「種の絶滅」に至るか、その判定法についても一定の基準を示すことができた。 もう一つの研究テーマは、非局所項を伴う反応拡散方程式の研究である。このタイプの方程式は空間変数に関する積分項を伴っており、解の漸近挙動の研究は非常に遅れている。本研究では、積分核が一定の条件をみたすとき、定常解の構成法とともに解の安定性を判定する方法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題は、反応拡散方程式に対する自由境界問題については、(I-1) 多次元領域における自由境界問題についての可解性を示し、解のspreading と vanishing に関する二者択一定理を示すこと, (I-2) 自由境界が無限遠方に拡がる場合、その拡大速度を評価すること、の二つであった。また、非局所項を伴う反応拡散方程式については(II-1)正値定常解を構成すること、(II-2) 正値定常解の安定性を判定すること、であった。 これらの課題について、自由境界問題に対しては球対称領域であるが解の存在を示すとともに、解のspreading と vanishing の定義、それぞれの場合の解の性質を導き、さらに二者択一定理を示すことができた点は大きな進展である。ただ、残念ながら自由境界の拡大速度については、有意義な情報を得られていない。 非局所項を伴う反応拡散方程式に対しては、分岐理論や単調性理論を利用して一般的な条件の下で正値定常解の構成に成功した。残された難問が正値定常解の安定性を調べることである。この問題は線形化作用素が非局所項を含むため、一般論が適用できない。しかし、積分核や反応項に特別な条件を課し、正値定常解における線形化固有地問題の固有値がすべて正であることを示し、安定性を示すことができた。これは、意味のある進展だと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題は自由境界問題に対しては、2013年度同様に多次元の一般領域における自由境界問題の解の構成とその漸近挙動の解析が中心となる。また、非局所項を伴う反応拡散方程式については、正値定常解の安定性を調べる方法を見出すことである。 そのための研究推進の方策としては、本グループの研究活動に加えて、国内外の研究グループとの研究交流を進めることを企画している。とくに2014年度は6月にチューリッヒ大学に招待されている他、7月にはマドリードで開催される10th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications において「非線形モデルの分岐と漸近解析」をテーマとする特別分科会を組織する予定である。また、秋には北京の首都師範大学に招待されている。これらの機会を利用して反応拡散方程式に関連するテーマで研究しているグループとの研究情報の交換や研究ディスカッションを進めたい。
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Research Products
(9 results)