2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蜂巣 泉 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (90135533)
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Keywords | 新星爆発 / 白色矮星 / 連星系の進化 / チャンドラセカール限界質量 / 超新星 / 恒星風 / 水素核燃焼 / 質量降着 |
Research Abstract |
本研究の目的は、Ia型超新星の最新の観測結果を統一的に説明する、新たな連星進化モデルを構築し、Ia型超新星の起源を理論面から明らかにすることである。特に、最近注目される次の2点:(1) チャンドラセカール限界質量を大きく超える白色矮星が爆発したとしか考えられない、非常に明るいIa型超新星の起源、および、(2) 質量降着によりスピンアップし、チャンドラセカール限界質量を超えた白色矮星がどこまで超新星爆発を引き延ばせるか、に焦点をあてる。 今年度は、チャンドラセカール限界質量を超える、あるいはぎりぎりの質量を持つ白色矮星を観測的に特定する上で、非常に重要な発見があった。天の川銀河の近傍にある、アンドロメダ銀河に爆発周期がほぼ1年の回帰新星が発見されたことである。回帰新星は、白色矮星上に水素物質が積もり、水素核融合反応が爆発的に起こることにより、外装部分が大きく膨らみ、明るくなる。連星系中の相手の星から、ガスが降り積もることにより、回帰新星は何度も爆発を繰り返す。この爆発周期は、白色矮星の質量が大きいほど、また質量降着率が大きいほど短くなる。今までに発見された回帰新星の周期でもっとも短いものは、U Sco の8年である。新たに発見されたアンドロメダの回帰新星の1年周期は、今までにない新記録である。このような短い周期で新星爆発を起こすには、白色矮星が非常に重い必要がある。しかし、回帰新星の爆発周期がどこまで短くなれるのかの正確な計算は、行われていなかった。今回、その限界を調べて、もっとも短くなる極限として、回転していない(スピンアップしていない)白色矮星なら、約2ヶ月であることを明らかにした。(この結果は投稿中。)残念ながら、1年周期の回帰新星は、チャンドラセカール限界質量を超えている必要はなく、1.3~1.38倍太陽質量の白色矮星であればよいことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の目的は、白色矮星のスピンアップの効果を取り入れて、どの程度の頻度でチャンドラセカール限界質量を超える白色矮星がIa型超新星として爆発するかを調べることであった。研究1年目において、降ってくるガスが太陽組成の元素分布をもっている場合について、ほぼ調べる子ができた。これは、当初の予定どおりの順調な結果である。2年目以降は、ガスの組成が太陽分布からずれている場合について、低金属量の場合について調べることが予定であったが、そのための準備はほぼできた。さらに本年度は、爆発周期1年という、おもいもかけない回帰新星がアンドロメダ銀河に発見されたため、この天体とIa型新星の関係を調べることを優先した。この結果は、白色矮星がチャンドラセカール限界質量にひじょうに近い、1.3倍太陽質量以上であることを明らかにすることができた。これは、白色矮星が順調に太り、近い将来Ia型超新星になれることを強く示唆している。この天体の発見と理論的な白色矮星の推定は、私たちが提案しているIa型超新星の進化経路上に対応する。研究計画の時点では想定していなかったが、非常に重要な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画である、降着するガスが太陽組成に比べて、低金属量の場合について調べる。すでに、計算コードなどの準備はできている。当面の困難はない。
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Research Products
(6 results)