2012 Fiscal Year Research-status Report
超高エネルギー連星系における相互作用と放射のダイナミクス
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24540235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
岡崎 敦男 北海学園大学, 工学部, 教授 (00185414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 統也 山梨学院大学, 経営情報学部, 教授 (50319084)
河内 明子 東海大学, 理学部, 准教授 (70332591)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / ガンマ線天文学 / 恒星物理学 / 高密度天体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、超高エネルギーガンマ線連星系の活動性の起源を、2つの競合モデル(降着モデルとパルサー風モデル)に沿った3次元流体シミュレーションを行い、得られた結果を観測と比較して明らかにすることと、超高エネルギーガンマ線連星系の候補天体であるBe/X線連星系(Be星と中性子星の連星系)に見られる大規模なX線増光現象の起源を3次元シミュレーションと放射計算により明らかにすることの2つである。そのための第1段階として以下の研究を行った。 【SPHコードの改良】降着シミュレーションのために、粒子を分割することで高精度を得るアルゴリズムをSPHコードに組みこんだ。改良したコードを超高エネルギーガンマ線連星系の降着シミュレーションに適用し、おおむね期待通りの高精度化がなされることを確認した。しかし、ときおり粒子の適切な分割に失敗するので、現在、その原因を調査中である。 【SPHコードと放射輸送コードのインターフェースの開発】Be星を持つ系では、星周円盤からの放射を調べることで相互作用のタイプや性質を探ることができるので、SPHシミュレーションの結果を放射輸送計算コードに読み込ませて放射計算を行うことが重要である。そのためのインターフェースを開発した。 【超高エネルギーガンマ線連星系の3次元SPHシミュレーション】コンパクト天体の性質が解っていない超高エネルギーガンマ線連星系のうち、性質の異なる2つの系LS 5039とLS I +61 303に対して、パルサー風モデルに基づく3次元シミュレーションを実施し、パルサー風の強さが衝撃波領域やBe星星周円盤の構造に与える影響を明らかにした。 【Be/X線連星系の大規模X線増光現象のシミュレーション】ワープしたBe星星周円盤からの降着現象の近似として、軌道面から傾いた円盤からの降着シミュレーションを行い、傾きと降着率の関係を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的達成のためには、(1)SPHコードを改良し、(2)超高エネルギーガンマ線連星系の3次元SPHシミュレーションを2つの競合モデルに沿って行い、(3)結果を観測と比較してモデルに制限を与えることと、(4)Be/X線連星系の大規模X線増光現象の起源を明らかにするために、ワープしたガス円盤からの降着シミュレーションを行い、(5)結果を観測と比較してモデルの成否を決定することが必要である。全体として最終的なゴールに対して約1/4が達成されたと考える。各段階における達成度は次の通りである。 【(1)SPHコードの改良】粒子分割の手法をSPHコードに組み込む計画はほぼ達成できたが、ワープしたガス円盤のシミュレーションのためのコード改良が必要。達成度は50%。 【(2)超高エネルギーガンマ線連星系のSPHシミュレーション】コンパクト天体の性質が解っていない系のうち、性質の異なる2つの系に対して降着モデルとパルサー風モデルのそれぞれに基づいたシミュレーションを実施する計画であり、初年度はパルサー風モデルのシミュレーションを実施した。達成度は50%。 【(3)超高エネルギーガンマ線連星系のシミュレーション結果と観測との比較】降着流からの放射計算と観測との比較は次年度に行う予定である。現時点での達成度は0%。 【(4)Be/X線連星系のワープしたガス円盤からの降着シミュレーション】現時点では、傾いた円盤からの降着シミューションを行ったのみである。ワープした円盤のシミュレーションを行うためにはコードの改良が必要であり[(1)の項目参照]、そのことも考えると達成度は10%というところである。 【(5)Be/X線連星系のシミュレーション結果と観測との比較】ワープした円盤からの降着シミュレーション、および降着流からの放射計算と観測との比較は次年度以降に行う予定である。現時点での達成度は0%。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度(研究初年度)に引き続き、コードの改良を行い、改良したコードを用いて超高エネルギーガンマ線連星系の降着シミュレーションとBe/X線連星系のワープしたガス円盤からの降着シミュレーションを行う。そして、それらの結果を観測と比較し、モデルの成否を決定する。具体的には、今後の2年間で以下の研究を行う。 【SPHコードの改良】ワープしたガス円盤のシミュレーションを行うために必要だとされているartificial conductivityと呼ばれる量をSPHコードに導入し、テスト計算によりその効果を検証する。 【超高エネルギーガンマ線連星系に対する降着モデルに基づくSPHシミュレーション】初年度にはパルサー風モデルに基づくシミュレーションを実施したので、次年度には降着モデルに基づくシミュレーションを実施する。 【超高エネルギーガンマ線連星系に対する放射輸送計算と観測との比較】SPHシミュレーションの結果を用いて、可視光と近赤外線でのスペクトルを計算する。放射輸送計算にはHDUST (Carciofi & Bjorkman 2006) を用いる。得られた結果を観測と比較して、モデルを検証する。 【 Be/X線連星系のワープした円盤からの降着シミュレーション】Be/X線連星系の大規模X 線増光現象の起源を明らかにするために、この現象が良く観測されている系のパラメータを用いて、2段階に分けたシミュレーション(Be星星周円盤がコンパクト天体の潮汐力によりワープするシミュレーションとワープしたBe星星周円盤からの降着シミュレーション)を行う。 【 Be/X線連星系に対する放射輸送計算と観測との比較】SPHシミュレーションの結果を用いて、X線光度曲線や可視光と近赤外線でのスペクトルを計算し、その結果を観測と比較してモデルの成否を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使途は次の通りである。 【大容量ハードディスクの購入】シミュレーションから大量のデータが生み出されるので、それを保存したり、それを用いた処理を行うための大容量ハードディスクを購入する。 【計算機使用料】 シミュレーションは、主に北海道大学情報基盤センターのスーパーコンピュータSR16000 上で行う。そのための利用負担金を支出する。 【研究打ち合わせ旅費】研究代表者・研究分担者・連携研究者が緊密な連携を取りながら共同研究を行うために、顔をつき合せて研究打ち合わせを行う機会が必要である。そのための費用を支出する。 【研究成果発表のための経費】研究成果を発表するために、国内外の研究会・学会へ出席するための経費を支出する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Modeling High-energy Light curves of the PSR B1259-63/LS 2883 Binary Based on 3D SPH Simulations2012
Author(s)
Takata, J.; Okazaki, A. T.; Nagataki, S.; Naito, T.; Kawachi, A.; Lee, S.-H.; Mori, M.; Hayasaki, K.; Yamaguchi, M. S.; Owocki, S. P.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 750
Pages: 70
DOI
Peer Reviewed
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