2013 Fiscal Year Research-status Report
超高エネルギー連星系における相互作用と放射のダイナミクス
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24540235
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
岡崎 敦男 北海学園大学, 工学部, 教授 (00185414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 統也 山梨学院大学, 経営情報学部, 教授 (50319084)
河内 明子 東海大学, 理学部, 准教授 (70332591)
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / ガンマ線天文学 / 恒星物理学 / 高密度天体 |
Research Abstract |
超高エネルギーガンマ線連星系における活動性の起源とコンパクト天体の性質を解明するために平成25年度には以下の研究を行った。 【プログラムの改良】大質量星の恒星風に対する放射の影響を取り入れるために、これまでは放射の効果を擬似的に取り入れていたが、放射による力を各点の速度勾配を用いて正しく計算するようにプログラムを改良した。しかし、シミュレーションでの速度分布の揺らぎが大きく、そのために現時点では放射による恒星風の加速が期待通りのものにはなっていない。速度分布の揺らぎを低減する工夫が必要である。 【超高エネルギーガンマ線連星系におけるBe 星星周円盤の構造と放射の計算】前年度に引き続き、ガンマ線連星系LS 5039に対してパルサー風と恒星風の衝突のシミュレーションを行うとともに、新たにそのデータを用いて熱的X線放射の計算を行い、パルサー風の強度の上限を求めた。また、新たに2つのガンマ線連星系(HESS J0632+057, Cyg X-3)に対する3次元シミュレーションを行い、これらの系での衝撃波領域の構造や降着流の構造を初めて明らかにした。また、Cyg X-3に対して、シミュレーションに基づくX線放射・吸収の計算を行い、観測と比較した。後者については、シミュレーションから計算したX線光度曲線と観測されるX線光度曲線の間に食い違う部分があり、現在、その原因を調査中である。 【 Be/X線連星系の3次元SPHシミュレーション】Be/X線連星系の大規模X 線増光現象(ジャイアント・アウトバースト)の起源を解明するための第一歩として、潮汐トルクと粘性トルクの働きをシミュレーションで調べた。また、ワープした円盤の計算方法について検討し、当初考えていたaritificial conductivityの導入をやめ、コードを大幅に書き換えて物理的に正しいシミュレーションを行うことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的達成のためには、(1)SPHコードを改良し、(2)超高エネルギーガンマ線連星系の3次元SPHシミュレーションを2つの競合モデルに沿って行い、(3)結果を観測と比較してモデルに制限を与えることと、(4)Be/X線連星系の大規模X線増光現象の起源を明らかにするために、ワープしたガス円盤からの降着シミュレーションを行い、(5)結果を観測と比較してモデルの成否を決定することが必要である。全体として最終的なゴールに対して約40%が達成されたと考える。各段階における達成度は次の通り。 【(1)SPHコードの改良】SPHコードをいくつかの点で改良できたが、ワープしたガス円盤のシミュレーションのためのコード改良が必要。達成度は60%。 【(2)超高エネルギーガンマ線連星系のSPHシミュレーション】新たに2つの異なるタイプのガンマ線連星のシミュレーションを始め、そのうちの1つの系についてシミュレーションを終了した。達成度は70%。 【(3)超高エネルギーガンマ線連星系のシミュレーション結果と観測との比較】当初の計画は可視光と赤外線での比較だったが、今年度は2つの系に対してシミュレーションに基づくX線放射を計算し、観測と比較した。波長域が異なるので評価が難しいが、自分では40%程度の達成度であると考える。 【(4)Be/X線連星系のワープしたガス円盤からの降着シミュレーション】現時点では、傾いた円盤からの降着シミューションを少し発展させただけである。ワープした円盤のシミュレーションを行うためにはコードの大幅な改良が必要であり、そのことも考えると達成度は約20%である。 【(5)Be/X線連星系のシミュレーション結果と観測との比較】ワープした円盤からの降着シミュレーション、および降着流からの放射計算と観測との比較は最終年度に行う予定である。現時点での達成度は0%。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、25年度に引き続き、SPHコードの改良を行い、改良したコードを用いて超高エネルギーガンマ線連星系の3次元SPHシミュレーションを行い、その結果を観測と比較し、モデルの成否を決定する。また、当初の計画を変更し、Be/X線連星系のワープしたガス円盤の1次元シミュレーションを行う。具体的な研究計画は以下の通り。 【SPHコードの改良】放射による恒星風の加速を正しく計算するための改良を続ける。また、ワープしたガス円盤の計算を行うための大幅なコード書き換えに着手する。後者は、当初の計画を変更したものである。 【超高エネルギーガンマ線連星系に対するSPHシミュレーション】これまでに4つの系のシミュレーションを行ってきた。最終年度には、当初の計画を変更して、ガンマ線連星系の中で最も謎に満ちた天体(HESS J0632+057)に焦点を絞りシミュレーションを行う。 【超高エネルギーガンマ線連星系に対する放射輸送計算と観測との比較】HESS J0632+057のSPHシミュレーションに基づく可視光・赤外線放射と衝撃波領域からの非熱的高エネルギー放射を計算する。その結果を観測と比較することで、この系の正体を明らかにする。 【 Be/X線連星系のワープした円盤のシミュレーション】当初は、3次元SPHシミュレーションを行う予定だったが、検討の結果、ワープ円盤のシミュレーションを行うためにはSPHコードを根本から書き換える必要があることが分かったので、それは将来の課題とし、今年度は1次元のシミュレーションを行い、その結果を観測と比較することにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
広島大学での研究打ち合わせ(2014年3月)のための旅費と日本天文学会春季年会参加(2014年3月)のための旅費が予定よりも少なくすんだため。 ガンマ線連星の観測のために南アフリカ共和国へ出張(2014年5月)するので、その旅費の一部として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Precessing Warped Be Disk Triggering the Giant Outbursts in 2009 and 2011 in A0535+262/V725Tau2013
Author(s)
Moritani, Yuki; Nogami, Daisaku; Okazaki, Atsuo T.; Imada, Akira; Kambe, Eiji; Honda, Satoshi; Hashimoto, Osamu; Mizoguchi, Sahori; Kanda, Yuichi; Sadakane, Kozo; Ichikawa, Kohei
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 65
Pages: 1-25
DOI
Peer Reviewed
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