2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 至順 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30386635)
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Keywords | 中性子星 / 磁場 / 振動 / 安定性 |
Research Abstract |
本年度は、磁場中性子星振動を理解する上で重要となる一般相対論と電磁場の関わりについて理解を深めるために、(1)ブラックホール内部地平面内で電荷を持った薄い球殻が回転した場合の平衡解を、電磁場の構造も含めた時空構造を回転角速度の2次の精度まで求めた。また、磁場星の振動に関しては、前年度に試みた”磁場の強さと振動数を同時にゼロにする極限”を考える方法がうまく使えなかったので、振動数をゼロにする極限を用いた解析を止め、(2)磁場の強さと振動数が一般の値の場合で、十分弱いトロイダル磁場だけを持つ星の場合について、ニュートン力学を用いた定式化及びその数値解析を行った。 (1)に関しては、前年度に回転が無い場合の平衡解を求めたので、それに対して回転の効果を摂動として与え、平衡解を求める事に成功した。電荷を持った球殻が回転するため、球殻の内外には電場だけではなく磁場が現れ、強い重力場中での電磁場の解析解を求める事ができた。また、ブラックホール解と薄い球殻を接続するためには等方な圧力があれば十分である事も示す事ができた。 (2)に関しては、まず、磁場の強さの二次の精度、つまり磁気力による星の変形の効果まで考慮した定式化を行った。これまでの研究では、磁場による変形の効果は無視されてきたが、磁場による変形の効果とローレンツ力は同じオーダーで効くため、これを無視する事は特別な場合を除き正しくない。得られた基本方程式を解くための数値コードの開発も行い、f-, p-, g-モードなどの振動モードを求める事に成功した。また、この解析とは別に磁場が無い場合の固有関数から直接磁場による振動数のずれを求める定式化及び数値計算も行い、両計算の結果が計算精度の範囲でよく合うことも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の開始時点では、ゆっくり回転する星の固有振動の従来の計算手法が、そのまま磁場星の振動解析に適応可能と予想していた。この予想は、星の振動に対する影響という意味では、回転の効果と磁場の効果は、振動方程式への現れ方としては、非常に類似している事から妥当であり、実際、定式化までは全く同様に行う事が可能であった。そのため、前年度はゼロ振動数極限を用いた方法を適応したが、これが数値計算の段階でうまく行かず、固有振動解を得る事が出来なかった。今年度は、別なゆっくり回転する星の固有振動解析の手法でゼロ振動数極限を用いない方法を適応し、磁場星の固有振動解を求める事に成功した。しかし、この方法でも磁場星に存在する事が予想されている振動モードが求まってないなどの問題があり、回転星振動の手法がそのまま磁場星振動に適応できないという問題がある事がより鮮明になった。以上の理由で上記の達成度と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
回転星の振動解析で確立された計算手法が磁場星では十分に適応できない事が分かったので、今後は次の戦略を考えている。(1) 回転星振動の手法を使える範囲で用い可能な限り磁場星振動の知見を得る。(2)星の形状にこだわらずに磁場と自己重力を含む円筒系など、より解析が行い易いモデルの解析を行い磁場星振動の基本的な性質を理解するためのヒントを得る。(3)固有振動解析ではなく時間発展を計算することで固有振動、安定性の解析を行う。(この手法は現在主流の方法であり、独創的とは言えないが、この方法も確立した方法という訳でもない。)(4)自己重力を含まないが、磁場と圧力の平衡解の線形解析は、プラズマ核融合炉の研究で古くから行われているため、この分野で使われている手法が適応できないか考察を行う。(5)具体的な安定性解析には可能な限りいろいろな平衡解が必要であり、より広い範囲で磁場星の平衡解が得られるように平衡解の研究も平行して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初予定していた磁場星の平衡形状に対する安定性の数値解析の本計算開始及び研究成果発表を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した磁場星の平衡形状に対する安定性の数値解析の本計算開始及び研究成果発表に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。 磁場星の平衡形状に対する安定性の数値解析の本計算開始に当たり必要なソフトウェアの購入費、研究成果発表のための論文投稿料、旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)