2013 Fiscal Year Research-status Report
重力/ゲージ理論双対性の可積分構造に基づいたグルーオン散乱振幅の研究
Project/Area Number |
24540248
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 勇二 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50312799)
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Keywords | 弦理論 / 重力/ゲージ理論双対性 / 可積分性 / グルーオン散乱振幅 / 極小曲面 / 熱力学的ベーテ仮説 |
Research Abstract |
近年の弦理論の主要な研究テーマの一つである重力/ゲージ理論双対性により、超対称ゲージ理論の強結合におけるグルーオン散乱振幅は反ドジッター時空中の極小曲面の面積で与えられる。これまでの研究により我々は、双対性の背後に現れる可積分構造を用いて特定の運動量配位の周りで強結合散乱振幅を解析的に求める方法を定式化してきた。本研究の目的は、このような我々の成果をさらに発展させ、ゲージ理論の強結合ダイナミクスを解明していくことである。 実施計画に従い昨年度は、粒子の運動量が2次元ローレンツ空間含まれる場合のそれまでの結果を拡張し、運動量が3次元空間含まれる場合に、4次元極大超対称ゲージ理論の planar 極限での強結合散乱振幅を解析的に展開する方法を定式化した。25年度はさらに運動量が一般の4次元空間に含まれる場合の解析を行った。一般の運動量を扱うためこれまでの定式化と異なる新たな手法を開発し、6点散乱振幅の主要次数の展開式を具体的に導いた。近年散乱振幅の解析性に基づいた新たな手法による2、3、4ループの摂動的な結果が得られているが、我々の強結合の結果はこれらの結果と強い類似性を示しており、散乱振幅の全体像を探る上で大変興味深いものとなっている。 強結合におけるゲージ理論の解析はハドロンの物理など自然界の理解には大変重要であるが、摂動的な取り扱いができないため大変困難であり、通常は大規模な数値計算を用いておこなわれる。我々の結果は、強結合超対称ゲージ理論の散乱振幅・ダイナミクスの解析に対する新たな道を開くものである。また、我々の結果は、4次元ゲージ理論、10次元超弦理論、2次元可積分模型の間の非常に興味深い関係も示している。こうした結果は、原著論文、国際会議プロシーディングスにまとめられると共に、海外でのスクールで解説されるなど、大きな関心を集めるものとなっている(以下の欄参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の当初の目標は、粒子の運動量が一般の4次元空間含まれる場合の強結合散乱振幅の解析展開式の導出であった。当初の予定とは異なる手法を開発することにより、6点振幅のな展開式を実際に導出することに成功した。また、新たに開発された方法は、散乱振幅を解析する上で有用なものであることも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
24、25年度の成果を踏まえ、今後本研究を推進していくために次のような方策を考えている:(1)一般的な「質量-結合関係」を導くため、形状因子に基づく共形場理論の可積分変形の結果を活用する。(2)強結合散乱振幅の構造を理解するため、励起熱力学的ベーテ仮説方程式を用いて強結合散乱振幅の解析性を解析する。(3)25年度に開発した quantum Wronskian を用いた新たな手法を応用し、強結合散乱振幅の高次の展開式を導く。(4)ゲージ理論の強結合ダイナミクスの解明に向けて、形状因子の解析に我々の手法を適用する。(5)演算子積を用いて、強結合側・弱結合側を包括する散乱振幅の大域的な構造を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は主に外国旅費が予定よりかからなかったため若干の繰り越しがあった。(本年度中に決済されなかった経費を差し引くと次年度使用額は9万円ほどである。) 次年度使用額は、次年度の外国・国内旅費に充てる予定である。その他の研究費使用計画には特に変更はない。
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