2013 Fiscal Year Research-status Report
原子核の電気双極子モーメントと核力の時間反転対称性の破れ
Project/Area Number |
24540251
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00192427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東山 幸司 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60433679)
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Keywords | 原子核構造 / 殻模型 / 核子対殻模型 / 中重核 / 電気双極子モーメント / シッフモーメント |
Research Abstract |
本研究の成果は,質量数130領域の原子核に対して,パリティと時間反転対称性(PT)を破る相互作用により生じる電気双極子モーメントを計算したことである。中重核に対する電気双極子モーメントの理論研究はこれまで行われておらず,本研究により初めて平均場を超えた核子対殻模型による数値解析に成功した。また,これまでの研究において,核子固有の電気双極子モーメントにより生じる原子核の電気双極子モーメントを計算しており,2つの効果を評価できるようになった。本研究の結果により,核子固有の電気双極子モーメントにより生じる原子核の電気双極子モーメントは中性子の波動関数の寄与が陽子のものよりも大きくなること,PTを破る相互作用により生じる原子核の電気双極子モーメントは特定のエネルギーレベルの寄与が重要であることが明らかになった。 また本研究では,殻模型により質量数130領域の偶偶核・奇核について殻模型による数値解析を実行し,原子核の励起メカニズムを明らかにした。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を行い,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。 さらにその他の成果として,テルル130原子核のニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の評価や質量数210領域の殻模型計算を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では平成25年度において,質量数200領域の原子核構造の解明すると共にシッフモーメントを計算する計画であったが,現段階ではまだ数値解析を終えておらず,予定よりも遅れている。その一方で,先行研究では考慮されていなかった新たな効果を取り入れる枠組みを整えることができた。原子核構造の数値解析が終われば,直ちに電気双極子モーメントの評価を行うことができるようになっており,研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では本年度において,質量数220領域の原子核構造の解明を目指す。この領域の原子核を計算するための核子対殻模型の枠組みは整えられており,質量数220領域の有効相互作用を決定するための数値計算を行っている。偶偶核・奇核・奇奇核のエネルギー準位・電磁遷移の実験値を同時に再現するように相互作用を決定し,核子対殻模型の波動関数を詳細に解析することで原子核構造を明らかにする。さらにPTを破る相互作用により生じるシッフモーメントと核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシッフモーメントの評価を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に高性能ワークステーションを購入したが、当初想定していたものに比べ、比較的安価なもので代用できた。 次年度は、成果発表を多くの機会を捉えて行いたいと考えているので、そのための旅費として使用する計画である。
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