2015 Fiscal Year Research-status Report
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24540254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大川 祐司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10466823)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 弦の場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論でフェルミオンを記述するには、弦の世界面上の共形場理論において Ramond sector を組み入れる必要があるが、超弦の場の理論の研究においては Ramond sector を含む部分の作用が構成できないということが約30年前からの問題であった。 今年度の京都大学基礎物理学研究所の国友氏との共同研究により、開弦でフェルミオンを記述する Ramond sector を含むゲージ不変な超弦の場の理論の作用を構成することに成功し、この長年の問題を解決した。これは古典的には完全な超弦の場の理論のローレンツ共変な定式化の最初の例である。 長年の問題の解決の鍵は Ramond sector の弦の場に対して適切な制限を課すことであったが、この制限自体は約30年前に既に知られていた。今回、超リーマン面の超モジュライ空間の観点からのこの制限の意味を明らかにしたことが概念的に重要であった。また、開弦でボソンを記述する Neveu-Schwarz sector に関するここ数年の急速な研究の進展により、それまでゲージ不変な作用の構成の際に使うことが考えられていなかった新たな材料の有用性が明らかになったことや、弦の場に関して高次の相互作用項を閉じた形で書き下すための超共形ゴーストの large Hilbert space の使い方に関して新たな知見が得られたことが、今回の Ramond sector を含む作用の構成にあたって技術的に重要であった。 ボソニックな弦理論にはスペクトラムにタキオンが存在するため、量子化は形式的なものにならざるを得ないが、そのようなタキオンに由来する不安定性のないバックグラウンドが可能な超弦の場の理論の完全な作用が構成できたことで、超弦の場の理論の量子論的な側面を調べる出発点に立つことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超弦の場の理論の Ramond sector を含む完全な作用の構成は、昨年度の段階でも達成できる見通しは立っていなかったが、今年度の研究で急速に進展して実現した。これは当初の研究計画で想定していた進展を大きく上回る成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
超弦の場の理論の Ramond sector を含む作用が構成されたことで、これまではできなかった様々な研究が可能になった。そのような研究を進めて行く一方、国友氏との共同研究で構成した理論はさらに改良することが可能であると考えられる。そのためのひとつの方向性は、超リーマン面の超モジュライ空間の分割との関係を明確に理解することであり、これに関しては東京大学大学院理学系研究科の大学院生である大森氏と共同研究を進めて行く。また、Ramond sector の取り扱いに関して Sen が我々とは異なったアプローチを展開していて、我々のアプローチとの関係を理解することも鍵になると考えられる。Sen とは来年度の国際研究会で直接会って議論する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも安く購入することができた物品があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の予算で足りなくなる恐れがある物品費に補充する予定である。
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Research Products
(2 results)