2014 Fiscal Year Research-status Report
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24540255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 宏次 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有限温度密度QCD / 高エネルギー重イオン衝突 / ゲージ場 / 非平衡の場の理論 / 動的臨界現象 / 符号問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)原子核衝突初期のダイナミクス:衝突初期に存在する強いゲージ場からの粒子対生成について、電場の存在が有限時間に限られる効果を解析的に評価し、摂動的振舞いから非摂動的振舞いへの移行条件を明らかにした。また、入射原子核(ハドロン)内のsmall-xグルーオンの飽和効果を取り入れた粒子生成の数値計算を発展させ、陽子陽子衝突事象のシミュレーション、陽子原子核衝突での重いクォーク生成に由来する電子分布の評価に進展があった。
(B')有限密度QCDの符号問題:課題(B)の関連から、統計平均法に現れる符号問題に対して、配位空間を実から複素空間に拡張することによって問題を回避する二つの方法(Lefschetz thimbleの方法と複素ランジュバン方程式の方法)をフェルミオン系について検討した。ボソン系と異なって、配位空間に被積分関数のゼロ点が複数存在することが特徴である。このために、両手法ともに統計サンプルがゼロ点によって区分され、それらを正しく平均に加えることが必要になる。Thimbleの方法では数値計算が複雑になるものの理論的な扱いは明確だが、複素ランジュバン法ではおおまかに区分されたサンプルの正しい取り扱いが非自明である。この側面を簡単なフェルミオン模型を対象に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
課題(B):QCD臨界点の動的揺らぎに関連する研究として課題(B')に取り組む中で、(B)に割く研究時間が想定以上に少なくなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)SU(2)ゲージ場シミュレーションに関する先行研究追試を完了させる。次に、我々の新しい観点として、ゲージ場と高エネルギー散乱粒子との相互作用が重イオン衝突事象の初期発展に与える影響を、理想化した設定で数値的に解析する。 (B)研究期間の延長を受けて、有効作用汎関数を用いた臨界揺らぎのスペクトル、および非平衡揺らぎの時間発展の研究を、今年度の中心課題に据えて取り組む。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況に鑑み、数値計算用GPUボードの増設を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
数値計算用のGPUボードの増設と、2015年度に神戸で開催する国際会議QuarkMatter2015での成果発表の旅費として使用する予定。
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