2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540258
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺澤 敏夫 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (30134662)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 勝晃 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (80399279)
|
Keywords | パルサー / 巨大電波パルス / 相対論的粒子加速 / FRB |
Research Abstract |
○巨大電波パルス(GRP)と硬X線・軟γ線波長域パルスとの相関の有無の判定:長い間、GRPは電波だけの現象であって、他波長域のパルスとは相関を持たないと考えられてきたが、2003年にかにパルサーの可視光パルスがGRPと同期して3%の増光を示すことが見出され、従来の考えは覆された。我々はまだ増光の判定が得られていない硬X線領域、およびきわめて緩い増光上限しか得られていない軟γ線領域について、X線天文学衛星「すざく」の硬X/軟γ線望遠鏡と地上電波望遠鏡群によるかにパルサー同時観測を企画・実行してきた。一昨年度に行った平成22-23年の硬X線・電波データの相関解析に加え、平成25年度には軟γ線・電波データの相関解析を行い、増光上限について従来より、約2倍強い制限を得ることができた。 ○研究の目的に記した「相対論的群遅延理論・パルス回折理論」の構築のため、新たに多周波地上電波観測(1.4GHz帯、2.3GHz帯)を企画・実施し、データ取得に成功した(平成26年3月6日)。結果は現在解析中である。 ○最近、世界的な注目を集めている電波現象に、正体不明のFRB(Fast Radio Bursts)がある。FRBの可能な解釈の1つは未知の電波パルサーからのGRPであるとするものであり、本研究の課題とも密接に関連している。ほかの解釈には、電波パルサー起源ではなく、中性子連星合体イベントや白色矮星合体イベント、強磁場中性子星の巨大フレア起源とするものなどがあるが、いずれにしても、観測データの解析手段はGRP検出の際に用いられている方法と本質的に同じである。我々は、本研究計画の連携研究者ならびにその周辺の電波天文関係者との議論を通じて、日本における観測可能性を見出すことができた。具体的な観測計画の企画・立案は平成26年度に行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度はすざくX線天文衛星の観測提案が採択され、X線・電波の同時観測データ量を従来の約2倍化し、相関判定の統計精度を一挙に高める予定であった。実際、同時観測は9月2回、3月1回、合計10時間超のデータを取得した。しかし、地上テレメトリ受信系の時刻精度低下(9月)、すざく機上時計の一時的不調(3月)という予期せざるトラブルに見舞われ、それらのデータ処理が未完である。時刻精度回復に向けた作業をすざく衛星時刻管理責任者(埼玉大学寺田氏)と共同して進めてきたが、平成25年度以内には完了せず、平成26年度に持ち越されることになった。 衛星観測と並行して、北極周回気球搭載の硬X線観測装置PogoLiteとの電波同時観測も企画・実行していたが、気球搭載装置のトラブルのため、取得された硬X線データはごく少量にとどまったとのことである。さらに、ロシアからのデータ送付が遅れ、同時観測データ処理はまだ実現していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
○すでに得られた衛星・地上同時観測データについて、衛星時刻精度の回復に努め、所期の目的である統計精度向上を実現する。また、平成26年9月、平成27年3月に予定されるすざく衛星かに星雲較正観測の際にも地上同時観測を企画・実行し、データ量の増加に努める。 ○今年度の新規項目として、かに星雲・パルサーの高時間分解光学観測(明野3m反射鏡による)と電波との同時観測の可能性が浮かんでいる。これが実現すれば、かにパルサー電波の群遅延量(→星間空間分散度、DM)を短時間で精密に決めることができる。それにより、未だ定説のないDM変動の時間スケールの下限(~数時間)を決定できるだろう。 ○本計画申請時には未定としていた、東北大学飯館観測所の復旧が実現した。多周波電波観測時に飯館観測所におけるUHF帯(~700MHz)の同時観測が実現できれば、GRPの周波数範囲についての新しい知見を得ることができるだろう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画は当初予定により3年間の研究期間を予定しており、それに沿って研究を進めている。本年度3月下旬に予定していた電波・X線同時観測が半年延期になったため、その観測データの格納に使用するハードディスクおよび関連ソフトなどの購入を次年度に繰り越すこととした。 平成26年度に予定される電波観測データ収納のためのハードディスク代金、ならびに観測・成果発表にかかわる旅費に大半の研究費を充てる予定である。
|
Research Products
(7 results)