2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 茂樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (80362408)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超弦理論 / Dブレイン / オリエンティフォルド / S双対性 / QCD / カラーの閉じ込め / 対称性の力学的破れ |
Research Abstract |
タイプIIB型の超弦理論にはS双対性と呼ばれる著しい性質がある。これは結合定数が大きな状況と小さな状況が物理的に等価になるという性質である。これを利用すると強結合の解析が困難な理論がそれと等価な弱結合の理論を用いて解析できるようになる。2012年度は、このS双対性を4次元の超対称性のないゲージ理論に応用する研究を行った。まず、タイプIIB型の超弦理論にD3ブレインとオリエンティフォルド3プレインと呼ばれるものをうまく配置することで、超対称性の破れた4次元のゲージ理論を実現し、S双対性を用いると、超対称性の破れた4次元のゲージ理論における双対性を得ることができる。一方の記述(電気的理論)はゲージ群が USp(2n) の強結合理論で、もう一方の記述(磁気的理論)はゲージ群が SO(2n) の弱結合理論である。電気的理論は強結合理論であるため、解析は大変難しいが、カラーの閉じ込めや対称性の力学的な破れなどの現象が起こるものと予想されている。それに対して、磁気的理論は弱結合であるため、解析は比較的容易である。実際、磁気的理論の方はスカラー場に不安定モードが生じ、非自明な真空期待値を持つことが示される。それによって、磁気的理論のゲージ対称性は破れ、同時に大域的対称性も一部自発的に破れることになる。これらの現象が電気的理論におけるカラーの閉じ込めや対称性の力学的な破れに対応することが議論できる。このように超対称性の破れた4次元のゲージ理論で説得力のある双対性の証拠がある例は非常に少なく、また超弦理論のS双対性を用いて超対称性のない4次元ゲージ理論におけるカラーの閉じ込めや対称性の力学的な破れの現象を説明することに成功した例は(私の知る限り)これが初めてであり、大変重要な成果だと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初に行う計画であったオリエンティフォルド3プレインにD3ブレインを超対称性が破れるように配置した系に関する研究は論文にまとまり、おおむね交付申請書に記載した通りの成果を挙げることはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載したとおり、Dブレインを用いて実現したゲージ理論の摂動計算を弦理論を用いて行う研究を行う。また、その計算とホログラフィック双対を用いた計算とを比較して、ホログラフィック双対に関する新たな知見を得ることができないか調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日常的に使用するノートパソコンやその他の周辺機器を購入したい。また、研究会等に参加のための旅費、他機関の研究者との研究打ち合わせのための旅費サポート等に科研費を使用する予定である。
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Research Products
(7 results)