2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 静岡大学, 理学部, 准教授 (20294150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 宇宙論 |
Research Abstract |
「なぜ我々の宇宙は3+1次元なのか」、「インフレーションの機構」、「暗黒エネルギーの正体」、「なぜ標準模型のおけるゲージ群と世代数がそうであるのか」といった問いは、量子重力を含む統一理論によって答えられるべきである。超弦理論はこのような理論の最有力候補であるが、これらの問いに答えるにはその非摂動的定式化が必要となる。IIB行列模型はこの非摂動的定式化を与えると期待されており、最近私は、IIB行列模型が自然に3+1次元の膨張宇宙を与えることを発見した。ここでは、宇宙のごく初期が見えていると解釈される。さらに上記の問のうち2番目以降に答えるために、後の時刻を見なければならない。平成24年度は、まず、IIB行列模型において後の時刻は古典解が支配的になるという考えに基づき、リー代数とその表現論を使って、古典解を得る一般的な手続きを与えた。そして、あるクラスの古典解を完全に分類した。その中に宇宙項問題を自然に解決する解があることを見出した。無数にある古典解のうちどの古典解に数値シミュレーションが繋がっていくのかを知ることが今後の課題になる。後の時刻を数値シミュレーションで見るには、行列のサイズを大きくしなけらばならないのだが、実際にそれは難しいため、小さな行列サイズで有効的に大きなサイズでの解析を再現できるくりこみ群的手法の開発が望まれる。平成24年度にはIIB行列模型で早い時刻を有効的に記述すると期待されるフェルミオンのパフィアンを簡単化した模型において、くりこみ群的手法を確立し、指数関数的膨張する時空が得られることを示した。これは、IIB行列模型においてインフレーションが起こることを示唆している。このくりこみ群的手法は今後の研究において、後の時刻をみるために強力な手段になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成24年度の研究実施計画のうち、行列模型におけるくりこみ群の手法の開発は予定通りに進展し、現在研究成果を論文にまとめているところである。行列模型の古典解の分類と摂動論的真空のパラメータとの対応については、前者はほぼ予定通りに進展し、さらに予定以上に宇宙論的に興味深い解が得られて、これらの結果を論文にまとめた。後者については、まだ今後の進展が待たれる。以上から総合的に見て、現在までの達成度は(2)と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究から、IIB行列模型においてはインフレーションが起こることが示唆されるが、今後はこれを確立するとともに、その機構を明らかにしていく。さらに、その後にビッグバンが起こり、輻射優勢の宇宙が現れるかも見ていきたい。これらのために、数値シミュレーションのアルゴリズムの改良を行い、より大きな行列サイズを扱えるようにする。十分に後の時刻の低エネルギースケールで標準模型が現れるかがひとつの試金石となるが、このためにはカイラルフェルミオンが出現する機構をまず明らかにする。さらに、そのまわりのゆらぎとして標準模型を与える行列模型の古典解を探す。並行して、行列の配位からの幾何の読み取り方を確立していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、研究成果を発表するための海外国内旅費と研究打ち合わせのための国内旅費に研究費を使用する。すでに、海外でのワークショップへの出席の予定が2件ある。
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Research Products
(10 results)