2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540264
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20294150)
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Keywords | IIB行列模型 / カイラルフェルミオン / 3世代 / ラージN繰り込み群 / AdS/CFT対応 / N=4超対称ヤン.ミルズ理論 / plane wave行列模型 |
Research Abstract |
行列模型におけるラージN繰り込み群を研究した。IIB行列模型において宇宙の時間発展の後の時刻を見るには、行列サイズNを大きくする必要があるが、実際の数値シミュレーションでこれを行うのは厳しい。ラージNの繰り込み群によって、小さなNで後の時刻を見ることができれば有用である。ここでは、フェルミオン行列と空間方向の行列の結合を無視してIIB行列模型を簡略化した模型(VDM模型)を考え、ラージN繰り込み群が確かに成立することを見た。さらに、この模型は3+1次元の指数膨張する宇宙と解釈される振る舞いを示すことを見出した。 上記と並行して、IIB行列模型のおける標準模型粒子の実現を研究した。IIB行列模型において、有限のNから出発してラージN極限で3+1次元時空上にカイラルフェルミオンを得ることは今までできていなかった。ここでは、まず3+1次元と余剰6次元の直積時空に相当する行列配位のまわりでは、これは不可能であることを示した。次に、3+1次元のローレンツ対称性と矛盾しないワープした時空に相当する行列配位のまわりでカイラルフェルミオンが得られることを示した。さらに、この結果を応用して、標準模型のmatter content(3世代)が得られる行列配位を構成することに成功した。 さらに、上記2つと並行して、AdS/CFT対応の直接的な検証を目指して、N=4超対称ヤン・ミルズ理論を数値シミュレーションによって研究した。plane wave行列模型による時間と3次元球面の直積空間上のN=4超対称ヤン・ミルズ理論のプラナー極限に対する非摂動的定式化を計算機に乗せて、カイラルプライマリー演算子の相関関数を計算した。その結果をGKP-Witten関係式に基づいた重力理論側から予言と比較した。行列のサイズで与えられるUVカットオフがまだ小さいにもかかわらず、3点関数と4点関数についての結果は重力理論側から予言と矛盾しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IIB行列模型を簡略化した模型において、ラージN繰り込み群の手法を開発し、それが有効であることを示した。これにより、元のIIB行列模型においても同様なラージN繰り込み群が有効であることが十分期待できる。こうして、行列模型に対するラージN繰り込み群の手法の開発という目標はほぼ達成できた。 また、ラージN繰り込み群の手法を用いたおかげで、この簡略化した模型は3+1次元の指数膨張する宇宙と解釈される振る舞いを示すことがわかった。同様な指数膨張は元のIIB行列模型でも起こることが期待され、研究目標であるインフレーションの機構の解明につながる。 IIB行列模型において3世代の標準模型粒子が実現できることを示したことは、宇宙創成からインフレーション期を経てホットビッグバンに至る宇宙の歴史をIIB行列模型において再現するという研究目標への大きなステップとなる。 plane wave行列模型による非摂動的定式化を用いて、N=4超対称ヤン・ミルズ理論の数値シミュレーションを開始し、AdS/CFT対応の予言と矛盾しない結果が得られたことは、研究目標である行列模型における曲がった時空を記述することに関して知見を与える。
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Strategy for Future Research Activity |
IIB行列模型のフェルミオンを落として簡略化したボゾニックIIB行列模型については、すでにハイブリッド並列化が完成し、京スーパーコンピュータ上でのシミュレーションを行っていて、成果を挙げつつある。この並列化を元のIIB行列模型やplane wave行列模型に適用して、より大きな行列サイズでの数値シミュレーションを行い、IIB行列模型の研究やAdS/CFT対応の研究を推進する。また、ラージNの繰り込み群の手法を元のIIB行列模型に適用する。さらに、IIB行列模型において標準模型のmatter contentが得られる行列配位で湯川結合を計算し、ここで得られるプランクスケール近傍での場の理論を繰り込み群により調べて、実験と合わせることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究者の招聘が2013年から2014年にずれ込んだため。 研究者を招聘するための旅費と謝金に使用する。
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Research Products
(11 results)