2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸 直樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80462191)
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Keywords | 重力波 |
Research Abstract |
本年度は前景重力波源として潜在的に重要な楕円軌道のコンパクト連星に注目して研究を進めた。具体的には、連星の進化、放出する重力波、そして方向決定精度等データ解析に関連する事項の検討を行った。 まず形成および進化に関しては、天体力学的な効果として広く知られている古在機構の影響を調べた。これまで古在機構と重力波放射の関連においては、主に永年摂動論が用いられてきた。これは軌道の位相については平均化して離心率や軌道傾斜角などのパラメータの長期進化を追うという手法で、比較的簡単に数値計算を行うことができる。これに対して研究代表者はポストニュートニアン効果を取り入れた直接的な3体計算のコードを作り、数値計算を実行した。そして従来予想された進化と大きく異なった振る舞いがみられることを発見した。そして、この差異の原因を理論的に説明することに成功した。これは、離心率が1に近い状況では、永年摂動論の前提となっている軌道の平均化が妥当性を欠くことによるものである。 次に実際の地上干渉計のネットワークで離心率の大きな連星が検出できた場合の天文学的な意義を指摘した。円軌道連星と比べて離心率を持つ連星が放出する重力波は、合体前の比較的早い時期に干渉計に検出されうる。したがって、合体時にその天球上の方向をよい精度で決定できる可能性がある。この指摘は連星中性子星の合体とそれに付随する電磁波現象を観測的に調べる上で大きな意味を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前景重力波源の進化に関して当初計画していた数値計算コードをほぼ予定通りに完成させ、多くのモデルパラメータについて、軌道進化計算を実行している。そして、従来見過ごされていた現象を発見するなど一定の成果をあげていると言える。しかし、次世代の重力波干渉計および電磁波対応天体観測に関連したデータ解析側面の研究は共同研究者との調整に時間を取られたためにやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
LIGO Indiaを含む地上干渉計ネットワークの配置の仕方と個々の連星の検出率、傾斜角分布等の関連を定量的に評価していく予定である。また、現在まで得られた研究成果を発展させ、新たに汎用性の高い解析的定式化を開発して前述の評価に活用していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者の調整に手間取り、データ解析面の研究に若干の遅れが生じている。これに伴い、研究会における成果の発表等が当初の計画とずれて本年度にまわることになった。 遅れて得られた研究成果を重力波の比較的大きな研究会にて今年度発表するとともに、作業効率を向上させるために数値計算用のハードディスク等の周辺機器の購入を行う予定である。
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