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2013 Fiscal Year Research-status Report

スピン・層・軌道の自由度が織りなすグラフェンの多彩な量子特性とその素粒子論的側面

Research Project

Project/Area Number 24540270
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

静谷 謙一  京都大学, 基礎物理学研究所, 名誉教授 (50154216)

Keywordsグラフェン / ラム・シフト / 低次元電子系 / ゲージ理論 / 物性理論 / 素粒子論
Research Abstract

グラフェンは質量ゼロのディラック粒子のように振る舞う電子をもつ“相対論的な”2次元電子系であり、その独特な量子特性は基礎物理と応用の両面から多くの研究者を魅了している。近年研究の焦点はグラフェンの積層系に移行してきている。層・スピン・軌道の自由度がゲージ相互作用を介して多様な力学をもたらし、グラフェンの物理と応用をより豊かにするからである。研究代表者もこの視点に立って、磁場中でグラフェンの多層化に伴って出現する軌道縮退・混合という新種の現象の解明と、その帰結を追求してきた。その内容は以下の通りである。
磁場中でグラフェンの二層系にはスピン・層・軌道について8重に縮退するゼロ・エネルギー準位が現れる。特に軌道に係わる縮退は(カイラル量子異常に由来する)位相的起源をもつ現象であり、グラフェン二層(そして多層)系に固有な現象である。研究代表者は、この軌道縮退するゼロ・モード準位が価電子帯の量子揺らぎにより有意に分離することに気づいた。これは水素原子のLamb shiftと類似した多体効果である。平成24年度には、この“軌道”ラム・シフトを考慮に入れて、擬ゼロ・モード8重項の構造を解析するとともに、その考察を三層系に拡張し、特にABC積層型三層グラフェンについては二層系と同様の特性が引き継がれることを指摘した。その際、積層形式が異なると軌道ラム・シフトの様子が大きく変わる兆候を得たので、引き続き平成25年度にはその詳細を(自然界で最も普通に見られる)ABA型三層について調べた。(ABC型三層とは対照的に)ABA積層三層グラフェンのゼロ・モード準位には一般に電子・ホール非対称性とvalley非対称性が現れるが、これらの非対称性が軌道ラム・シフトと電子間相互作用により著しく強められること、そしてこの結果は既存の実験事実とも整合していることを指摘する論文を発表した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究代表者の研究の基調には、素粒子論研究者の観点から,グラフェンに特有な“相対論的”な真空構造(Diracの海=価電子帯)に由来するグラフェンの量子特性を探究するという問題意識があり、現在の主要研究テーマである“軌道ラム・シフト”は正にその線に沿った成果と考えています。先行する研究ではこの量子効果の存在は見過ごされてきました(電子間相互作用として最低ランダウ準位に射影したもののみを用いると、この効果は見落とされてしまいます)が、この効果の寄与を正しく取り込むことなしには、実験的にも関心の高い、多層グラフェンの最低ランダウ準位の微細構造を理解することはできません。この効果の帰結については更に幅と深さを広げて研究する必要があると考えています。

Strategy for Future Research Activity

1. 研究テーマ
(1) グラフェン多層系の量子特性:今年度の研究を引き継ぎ,拡張する形で,グラフェン多層系の特性の考察を推進する。特に、擬ゼロ・モード準位上のサイクロトロン励起と集団励起、さらに外場による準位交差現象などに焦点を当てて研究する。
(2) 上記テーマの他にも、グラフェンと同様にディラック電子が現れる素材として最近注目を浴びている位相的絶縁体など興味深いテーマは豊富にある。研究の進展とともにこれらのテーマにも取り組みたい。
2.研究交流
今年度も電子系の国際会議に参加して情報収集・研究成果の発表に努めるとともに、各国の研究者との研究交流を図りたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度末の3/31から次年度初頭にかけてつくば市において開かれた電子系の国際研究集会に出席しました。次年度使用額として16,405円が計上されていますが、これは実質的には上記研究会のための旅費に組み込まれております。
上述のように、年度をまたいだ出張のための旅費に含めたいと思います。

  • Research Products

    (4 results)

All 2014 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Interaction-enhanced electron-hole and valley asymmetries in the lowest Landau level of ABA-stacked trilayer graphene2014

    • Author(s)
      K. Shizuya
    • Journal Title

      Physical Review B

      Volume: 89 Pages: 165403 1-10

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.89.165403

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] グラフェン3層系の最低ランダウ準位における軌道ラーム・シフトと混合

    • Author(s)
      静谷 謙一
    • Organizer
      日本物理学会2013年秋季大会
    • Place of Presentation
      徳島大学常三島キャンパス
  • [Presentation] Orbital Lamb shift in the lowest Landau levels of graphene bilayers and trilayers

    • Author(s)
      K. Shizuya
    • Organizer
      Graphene Week 2013
    • Place of Presentation
      Chemnitz, Germany
  • [Presentation] Orbital Lamb shift of the pseudo-zero-mode Landau levels in graphene bilayers and trilayers

    • Author(s)
      K. Shizuya
    • Organizer
      EP2DS-20  (Electronic Properties of Two-Dimensional Systems)
    • Place of Presentation
      Wroclaw, Poland

URL: 

Published: 2015-05-28  

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