2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24540274
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
比連崎 悟 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60283925)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中間子原子 / 中間子原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の究極の目的は、中間子--原子核系の研究から有限密度での種々の中間子の性質を知ることによって、量子色力学の対称性の様相--カイラル対称性の回復の様子や軸性量子異常の効果の変化(密度依存性)--の研究を進めることである。対称性の破れと回復の様相を知るためには、様々な現象や中間子の性質の間の相互関係を知る必要がある。温度0での密度依存性の研究を中心に据えている研究者は、重イオン衝突研究などと比べると少なく他の研究と相補的で特色ある研究であると言える。 当該年度では、eta(958)に関して、光子を6Li原子核に入射する(γ,d)反応を用いて、eta(958)--α原子核束縛系を生成する可能性に関して、理論的な研究を終えることができた。論文は投稿中(査読中)であり、まだ受理はされていないが、近い将来に出版できる見込みである。2核子移行反応を利用した、核子よりも重たい中間子の束縛系生成に関して、そのメリット及びデメリットを明らかにすることができた。これは将来の研究にとっても重要である。また、GSI研究所で実施された(p,d)反応を用いたeta(958)束縛系生成実験の結果に関しても、実験研究者との議論を通じ理解を進めることができた。さらに、核内ベクトル中間子の性質に関する研究も進み、φ中間子の透過確率測定による実験結果と、不変質量分布測定による実験結果の齟齬に関して、両方を無矛盾で理解できる可能性を示すことができた。将来のJ PARCでの実験に向けて議論を進める土台ができたと考えている。 研究期間を通じては、eta(958)--原子核束縛系の物理の構造及び生成反応に関する理論的研究から実験実施、結果の検討まで全てに貢献し理解を進めた。またパイ中間子原子の精密分光による研究に関しても、研究の全過程で理論的な面から貢献し発展させた。
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