2014 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCD理論におけるオーバーラップフェルミオンソルバーの前処理に関する研究
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24540276
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石川 健一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334041)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 素粒子(理論) / 格子QCD / カイラル対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度実施した、分子動力学ではカイラル対称性を緩和し再重み付け法により厳密なカイラル対称性を課すHMC法は、オーバーラップ演算子の核に近ゼロ固有値が現れるためうまく機能しなかった。本年度は、この近ゼロ固有値の性質に着目し、特殊な状況での再重み付けの可能性について探索するため次の研究を行った。
ゼロ固有値の出現はオーバーラップ演算子のカイラル対称性の実現(ゲージ場のトポロジーを通じて)と密接にかかわるため、厳密なカイラル対称性を課す限り現れうるものである。そこで、厳密なカイラル対称性を一部破る方法として、時空の境界条件を変更する方法がある。シュレーディンガー汎関数法は時間方向にディリクレ型の境界条件を課す手法で、この場合カイラル対称性が時間境界上でのみ破られることがリュッシャーによって指摘されている。このことから、時空全体ではカイラル対称性がないので、前述の近ゼロ固有値の出現は抑えられると考えた。このことに注目し本年度は次の研究を実施した。
シュレーディンガー汎関数法において、5次元型のドメインウォール演算子からオーバーラップ演算子を構成する方法を、武田の論文[1]に基づき実装し、さらに、より一般化されたメビウスドメインウォール演算子のシュレーディンガー汎関数法への適用を定式化した。ツリーレベルでの、メビウスドメインウォール演算子の固有値や、伝搬関数の性質を調べ、時間境界上でカイラル対称性が破れていることを確認し、連続極限で、正しいディラック演算子に移行することを確認した。このツリーレベルの解析は本学大学院生の村上祐子氏と共同で実施し、国際会議Lattice2014で発表した[雑誌論文1, 学会発表1,2,3]。 [1]S.Takeda, Phys.Rev.D 87,114506(2013).
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Research Products
(4 results)