2012 Fiscal Year Research-status Report
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24540278
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋本 正章 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20228422)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 恒星進化 / 超新星爆発 / 核反応 / 元素合成 |
Research Abstract |
大質量星の進化計算と爆発的元素合成をトリプルα核反応率を変えてシミュレーションした。核反応率はOgata et al.(2009)とFinbo et al.(2005) を用いた。前者が新しいとされる。トリプルα核反応率で、後者は従来まで使われてきた反応率に対応している。恒星進化はヘリウム星を初期条件とし、水素外層まで考慮した場合の太陽の25倍の星を主に計算した。進化は重力崩壊寸前まで計算し、いわゆる鉄コアと呼ばれる中心核が太陽の1.4倍程度になるまで計算で追った。すでにこの進化段階で二つの核反応率による生成元素と星の内部構造の違いが顕著になることが分かった。ヘリウム燃焼の終わりに生成される炭素と酸素の生成比が両反応で著しくことなる。新しい核反応率の場合炭素と酸素がほぼ同程度にでき、炭素燃焼後の元素生成が大いに異なっててくることが分かった。その結果もしこのまま星の爆発により宇宙空間へ元素が放出されるとネオン、マグネシュウム近傍の元素が過剰に生成されることになり、標準的につかわれる太陽系組成比と矛盾すると予測された。また鉄コアのサイズも二つの反応率で異なり、爆発メカニズムにも影響するとわかる。そこで次に、超新星爆発により放出される元素の量を定量的に計算するために、球対称の爆発のシミュレーションを遂行した。この結果は現在解析中である。この結果を分析することにより、トリプルα核反応率の正しい値を特定できると予測される。ただし、炭素と炭素の核融合反応率に大きな不定性のあることが近年実験的に指摘されているのでこの不定性を取り入れて、トリプルα反応率と炭素・炭素核融合反応率の不定性の大きさを明確にする必要性のあることが判明してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的とされる大質量星(太陽の25倍の星)の進化計算と超新星爆発のシミュレーションを遂行することに成功した。このことにより球対称に限ってはいるが超新星爆発により放出される元素を太陽系組成比と比べることができた。トリプルα反応率の正当性については低質量星の進化計算をAGB段階まで行えるかどうかで判断しているのみであったので、我々の研究は全く別の観点からトリプルα反応率の妥当性を検証できたものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
大質量星の恒星進化計算を系統的に行い、超新星爆発に伴い放出される元素組成をトリプルα核反応率を変化させて太陽系組成比と比較する。この結果を統計的に処理することにより問題の反応率に対する制限を与える。現在のところOgata et al. の反応率が間違っているという証拠はないがいくつかの独立な理論計算では以前の反応率のほうを支持する傾向が大きい。これが宇宙物理的観点からも支持されるか決定することは急務と思われる。また、さらに問題を複雑化しているのは12C+α-->16Oと12C+12Cの反応率に相当の不定性のあることが指摘されていることなので、この点も超新星爆発の元素合成と宇宙元素の化学進化の観点から制限をつけていく方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超新星爆発のシミュレーションのためにパーソナルコンピュウータを購入する。これは従来から使ってきたコンピュータがかなり故障してきたことによる。またpcクラスターのサーバーもデータの管理とプログラム・データのバックアップに必要となるばあいには購入する予定。
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Research Products
(9 results)