2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
青木 一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80325589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 行列模型 / 超弦理論 / 標準模型 / 自然さ問題・階層性問題 |
Research Abstract |
素粒子標準模型は実験結果ととてもよく合い、成功を修めている。一方、超弦理論は重力を含む統一理論として期待されているが、多くの真空が見つかっており、それらを比較することができず、予言力がないというのが深刻な問題である。超弦理論の非摂動的定式化の候補であるIIB行列模型では、ダイナミクスの解析により、弦理論の真空を比較することが可能である。そこで、IIB行列模型が磁束を持つトーラスにコンパクト化された状況を調べ、標準模型の物質内容を与える行列の配位を見つけた。さらに、行列模型の半古典的解析を行い、標準模型の出現確率を評価した。このような行列模型における現象論的研究は始まったばかりであるが、標準模型を超える現象論的模型の探索、行列模型の定式化に関する重要な問題、超弦理論の真空構造の解明など様々な研究を進める際、有用な結果を与えていくと期待される。 一方、標準模型を超える物理を探索するためにも、行列模型への現象論的模型の埋め込みを考えるためにも、ヒッグス粒子のようなスカラー粒子の質量が、輻射補正を受けても、プランクスケールやGUTスケールに比べて小さな値に保たれるのはなぜかという、いわゆる自然さ問題・階層性問題が鍵となる。そこで、この問題をウィルソン的繰りこみ群の枠組みで再考し、場の理論の枠内でどこまで解け、どこからは解けず、それが埋め込まれていると思われる高エネルギーで完全な理論で答えるべき問題かを明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行列模型での現象論的研究では、下記の今後の研究の推進方策にも書くように、検討すべき課題が多岐にわたっている。初年度である24年度は、まず、行列模型の最大の利点、すなわち、ダイナミクスの解析により、弦理論の真空の出現確率を評価し比較できるということを早急に示した。充分な成果をあげられたと思うが、今後、様々な検討を継続して推進していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も行列模型における現象論的研究を推進する。まず推進したい重要な問題は、ヒッグス場に関するものである。今までの研究からゲージ場やフェルミオン場の行列への埋め込みはわかった。ヒッグス場もその候補の行列への埋め込みはわかったが、いわゆる自然さ・階層性問題が問題となり、質量を軽く保つことが困難である。この問題に何らかの答えを与えたい。また、電弱対称性の破れや湯川結合定数の値なども調べたい。 2つ目の重要な問題はアノマリー相殺に関するものである。行列模型に現象論的模型を埋め込むと、一般に余計なU(1)ゲージ場が現れ、アノマリーを持つ。弦理論では、いわゆるグリーン・シュワルツ機構によりアノマリーが相殺するが、行列模型でそれがいかに実現されるか検討する必要がある。 3つ目の重要な問題はコンパクト化に関するものである。今まではトーラスコンパクト化を仮定して現象論的解析を行ったが、行列模型のダイナミクスからコンパクト化を解析する必要がある。また、そもそも行列における時空と物質をいかに解釈するかが、行列模型に残された重要な問題で、さらに検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は残額が若干あり、25年度に繰り越した。25年度は旅費などをおおめに使用し、予定額を使用しようと思う。
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Research Products
(4 results)