2014 Fiscal Year Research-status Report
ブラックホールの観測的検証へ向けた光線および偏光の解析
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24540282
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石原 秀樹 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80183739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古池 達彦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (40286646)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブラックホール / 光線 / 軌道角運動量 / 光渦 / カー時空 |
Outline of Annual Research Achievements |
光渦は,位相一定面が光軸のまわりにねじれ,光軸のまわりの軌道角運動量をもつ光線である.光の波長があらゆる物理スケールより短いという幾何光学近似のもとでは,光は時空のヌル測地線に従って伝播する.しかし,カー・ブラックホールのように時空自身が角運動量をもつような時空の中を光渦が伝播する場合には,角運動量間の相互作用により,軌道は測地線からずれることが期待される. 本年度の研究では,光渦のモデルとしてねじれた波面をもつスカラー波動を幾何光学近似のもとで解析し,渦波ビームの従う方程式を求めた.渦波ビームの軌道は,速度ベクトルと角運動量ベクトルがなす2次元面によって決まり,これら2つのベクトルの連立常微分方程式になることがわかった.特に,角運動量ベクトルの輸送が速度ベクトルに沿ったFermi移動となるとき,力学系として閉じたものになることが明らかになった. この連立常微分方程式に従う渦波ビームをカー時空において考え,次のことを明らかにした.無限遠で時間的になるKillingベクトルに沿った波源から放出された渦波ビームがカー時空中を伝播すると,軌道がヌル測地線からずれるとともに,角運動量ベクトルの輸送により,Killingベクトル場に対して運動する観測者についての渦波ビームとなる.このことは,カー時空の性質として新しい知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,渦波ビームの速度ベクトルと角運動量ベクトルの満たす連立常微分方程式を導出し,それらが閉じた力学系をなすことを明らかにした.この連立常微分方程式に従う渦波ビームがカー時空の性質を明らかにするためのプローブとなりうることを示し,研究は順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
角運動量を運ぶ光ビームとしては,円偏光ビームと光渦ビームがある.円偏光ビームと光渦ビームは,その軌道がともに測地線からずれることが明らかにされてきたが,円偏光ビームは速度ベクトルを記述する1つの常微分方程式で記述され,光渦ビームは速度と角運動量の2つのベクトルの発展を記述する連立常微分方程式で記述される.これらの類似点と相違点を明確にすることが次の課題である.
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Causes of Carryover |
2015年度は,一般相対論100周年にあたり,世界各地で研究テーマに深く関連する国際会議や国際研究集会が開催される.その場において本研究の成果を公表することが補助金を有効に使うことと考えた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ローマで開催予定の Marcel Grosmann Meeting および,そのサテライト集会に参加発表.
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Research Products
(12 results)