2015 Fiscal Year Research-status Report
ブラックホールの観測的検証へ向けた光線および偏光の解析
Project/Area Number |
24540282
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石原 秀樹 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80183739)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古池 達彦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (40286646)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ブラックホール / 光線 / 軌道角運動量 / 光渦 / カー時空 |
Outline of Annual Research Achievements |
曲がった時空中で光は測地線にそって進み,重力レンズ効果として観測される.光の測地線は時空の幾何構造を調べるための重要なプローブになっている.本研究の実績として2つのことが挙げられる. 1つ目は,ブラックホールのまわりの光の周回軌道に関するもので,「ブラックホールの影」の周りに明るいリング状の領域「明輪」がみられることを明らかにしたことである.ブラックホールの周りに連続的な光源が分布するときに,ブラックホールによる光の吸収が「ブラックホールの影」として観測されることが理論的に予想されている.ブラックホールの周りに光の不安定円軌道が存在することにより,ブラックホールの質量と角運動量によって決まる半径に近づくにしたがって対数的に光度が発散するような「明輪」の存在を理論的に示した.回転しているブラックホールでは,赤道面上の明輪の光度の差によって回転のパラメーターが決定できることを指摘した. 2つ目は,光の波面が光軸のまわりでねじれている「光渦」の軌道に関するもので,回転するブラックホールの周りの光渦の軌道がヌル測地線からずれることを明らかにしたことである.光はスピン1のベクトル場であり,偏光の自由度がある.円偏光の光はエネルギーとともに,スピン角運動量を運ぶ.一方,円偏光とは別の状態として,光渦も光軸のまわりの軌道角運動量を運ぶことが知られている.波長が短い光に対しては,アイコナール近似を用いると,軌道がヌル測地線に沿うことが導かれるが,アイコナール近似に波動性を取り入れることによって,光渦の軌道が従う方程式を導いた.この方程式は,測地線方程式からずれており,回転するブラックホールの周りの光渦を考えた場合,そのずれは,ブラックホールの角運動量と光渦の角運動量の間の相互作用によるものであることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホールの「明輪」に関しては,その存在が光の不安定円軌道によるものであることを明らかにし,光度分布を求めることができた.回転ブラックホールの赤道面上の明輪の光度に関しての解析により,ブラックホールの回転パラメーターを決めることがこ可能であることを明らかにした. 光渦の軌道に関しては,軌道を記述する方程式を導くことができた.回転ブラックホールの周りを伝播する光渦の軌道が測地線よりずれることを用いて,ブラックホールの回転を検出する可能性を指摘した.
|
Strategy for Future Research Activity |
明輪の光度分布の解析を一般の光の軌道に拡張するためには,KerrブラックホールのKilling テンソルに由来した保存量を用いた解析をする必要がある.また,ブラックホールのまわりの様々な光源の光がどのような赤方偏移を受けるかについても解析し,観測される物理量を予言する必要がある.また,最大回転ブラックホールでは,光の不安定円軌道がブラックホール地平面の半径に一致するので,ホライズン近傍の情報を得る手段として今後の研究の重要なテーマとなる. 光渦の軌道に関する方程式を導くことができた.光渦ベクトルはこの軌道に沿ったFermi移動で与えられると考えられ,これで光渦の発展が閉じた系となる.この系の回転ブラックホールまわりでの定量的な研究は今後に残されている.
|
Causes of Carryover |
本研究成果をより有効に公表するために,学会,研究集会,国際会議の参加などに用いる.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会,研究集会,国際会議の参加は, 日本物理学会,第18回特異点研究会,26-th JGRG Worksho を予定している.
|
Research Products
(8 results)