2013 Fiscal Year Research-status Report
核分裂における断裂中性子と分裂片質量分布の動力学的研究
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24540289
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
和田 隆宏 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202419)
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Keywords | 国際研究者交流 / 核分裂 / 分裂片質量分布 / 断裂中性子 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度に引き続いて断裂中性子の角分布に関する研究を進めるとともに、ランジュバン方程式による核分裂動力学の研究でいくつかの新しい試みを行った。 断裂中性子の研究では、3次元空間で時間依存シュレディンガー方程式の数値解(初期値問題)を計算するが、この際計算領域の境界での波動関数の扱いがポイントとなる。境界での反射が生じると計算精度が著しく低下するので、自由粒子に対して無反射となる境界条件を提案し、現実系に適用した。さらに改善が必要であるが、順調に進展している。11月に共同研究者であるCarjan氏を招き、現状や今後の方針について議論を行った。Carjan氏側の研究が順調に進展していることを受けて、断裂陽子についても計算を始めることにした。 ランジュバン方程式による核分裂動力学の研究では、模型空間の拡大・最適化の検討をさらに進めた。計算時間を要するため、進展は速くないが着実に進んでいる。10月に米国シアトルにおいて「Quantitative Large Amplitude Shape Dynamics: fission & heavy ion fusion(原子核形状の大振幅運動の定量的研究:核分裂と重イオン核融合)」において微視的研究の現状について学ぶとともに主導的研究者と議論する機会を得た。同時に我々と同様の巨視的研究を進めているSierk氏やRandrup氏と長時間議論することができた。現在、Fm系における核分裂片質量分布の同位体依存性(中性子数による分布の変化)に関して論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
断裂中性子の角度分布に関する研究は、順調に進んでいる。まず単純化した模型において角分布の特徴とその形成メカニズムを理解することができたので、次のステップとして断裂中性子の発生から観測までを計算する段階にある。 ランジュバン方程式による核分裂動力学の研究では、進展は緩やかであるが着実に進行しており、海外での研究状況も見ながら、適切な課題設定を行うことで、この分野でのトップランナーの位置を確保できる。東工大との協力関係も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
断裂中性子の研究に関して、Carjan氏側の研究において大きな成果が得られつつあることを念頭に、断裂陽子に関する研究を開始し、中性子と陽子の角分布を比較することで核分裂における「断裂」のメカニズムについての理解を深める。 核分裂動力学に関しては、これまでの努力を継続し、より定量性を高める。このためには模型空間の設定が大変重要であるので、これに集中して取り組み、核分裂研究のスタンダードとなる枠組みを提示するとともに、現存する実験データとの比較を通して定量的なチェックを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費として使用予定であったが、残額が小額で旅費としての執行が困難となったので、次年度使用に回すことにした。 次年度に予定している旅費の一部として使用する。
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