2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540298
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松原 哲郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (10195852)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙元素合成 / ガンマ線分光 / 核構造 / ビッグバン / リチウム7 / リチウム6 / ヘリウム3 |
Research Abstract |
ビッグバン宇宙元素合成において、ヘリウム4の存在比が25%と計算された、観測値と非常に良く一致した事は、宇宙物理学における最も大きな功績の1つである。しかし、リチウム7に関しては、同一の理論による計算値は、質量欠乏星における観測から推定するビッグバン時の生成量の3倍大きな値を示し、大きな問題となっている。そこで、このリチウムの生成に関わる反応率の物理的な測定が、本研究の主題である。(また、リチウム6については千分の一との報告もあったが、本研究による、フランス人研究者との議論から、リチウム6の観測値の導出方法に問題があり、現在、明確ではないとの情報が得られた。) 我々は、リチウム7の崩壊する過程に着目し、7Li(3He,p)9Be反応の断面積の精密測定を開始した。先行研究では照射エネルギー0.1MeVから0.4MeVの間のデータが欠乏していた。照射エネルギーE=0.4、0.7、1.0、1.4、1.7MeVで測定した結果、先行研究とほぼ一致する結果がえられた。さらに、これまで報告の無いE=0.34MeVで実験を行ない、新たなデータを得た。この結果は、既存のデータを延長した位置よりやや低く観測された。 本研究の結果の一部は、平成24年9月、日本物理学会にて報告した。また、本学数理物質科学研究科物理学専攻の湯浅暁玲氏の修士論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門に設置されている1MVタンデトロン静電加速器を用いて実験を行なった。しかし、既設設備には粒子散乱角度を正確に読みだす機構がなく、角度分解能が非常に悪い環境にあった。そこで、新たにマグネスケールを購入し角度分解能の読み出しの不確かさを飛躍的に減少させた。また、蒸着法によりリチウム7濃縮ターゲットを作成し、実験に使用した。検出器系は、半導体シリコン検出器2台を収納する検出器ホルダーを本研究経費で、特注品として購入し使用した。2台の検出器の組み合わせの最適化をはかり、混ざりの少ない解像度の良いデータの取得に成功した。この様な取り組みが次々と進展し、研究は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、7Li(3He,p)9Be反応に関し、照射エネルギーを下げて新たなデータを取得する方針である。照射エネルギーを0.25MeV程度まで下げて、広範囲にわたって新データを取得する。また、照射エネルギー0.4から3.0MeVの領域は既存データがあるが、これを確認する追試実験も予定している。さらに、これと並行して6Li(p,γ)7Be反応の研究も行う予定である。この実験に関しては、中国蘭州のInstitute of Modern Physics研究所のJ.J.He氏から共同研究の依頼を受けたところである。現在、この実験の遂行が可能かどうかを判断する準備実験を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本年度0.34MeVの測定に成功した手法を延長し、0.25MeV程度の低いエネルギーにおける新たなデータの取得を目指す。これには、昼夜連続の長時間実験が必要になるため、この実験の継続の為に、国内および外国から研究者を募り、実験を実施する。この為に、中国や韓国、カナダとの共同実験を模索している。この場合、本研究費を招へい旅費として活用する。さらに、「爆発的宇宙元素合成過程の基礎研究」に関する共同プロジェクトの提案がなされつつある。現在、高エネルギー加速器研究機構、東京大学原子核科学研究センター、日本原子力研究開発機構との共同研究を模索している。本研究経費を、他機関研究者との打合せならびに研究会の開催の際の旅費として活用する。
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