2013 Fiscal Year Research-status Report
アトラスミューオンシステムのための超高分解能ハードウエアトリガー
Project/Area Number |
24540299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 宏 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (80178574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 辰男 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (80153021)
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Keywords | トリガー判定回路 / FPGA / 高速シリアル通信 / 衝突型加速器実験 / 陽子陽子衝突 |
Research Abstract |
トリガー論理の実装にはFPGAが使用される。ある程度大規模な論理が搭載可能なFPGAを使用して研究開発を進めるために、約35万論理セルを持つXilinx社製FPGA、Kintex7を搭載した汎用モジュールPT7を開発した。設計と試作は前年度に行ったが、若干の不具合が発見されたため、今年度改良版を製作した。PT7は10Gbpsに及ぶ高速シリアル通信回路8系統を装備し、総計で80Gbpsに及ぶ大量のトリガー情報を処理できる。これによりアトラス測定器のミューオン精密チェンバーのトリガーデータ送出をエミュレートできる。また、トリガー判定結果を実際に許容された2マイクロ秒程度の遅延時間で後段の判定論理回路に同じシリアル通信を使って送出が可能である。LHC実験ではビーム周回やビームバンチ交差タイミング信号をTTCと呼ばれるシステムで供給している。PT7はTTCモジュールも搭載可能であり、実際の実験と同じタイミング信号やトリガー情報を用いてトリガー判定回路の評価を行うことができる。また、診断評価のため、FPGA内に蓄えられたスナップショット情報(ある瞬間の内部データの転写)を効率よく読み出せるように、ギガビットイーサネットインターフェースを搭載している。この接続により、スナップショットをPCに転送し解析を行うことにより効率的な開発が行えるようになった。このPT7モジュールを複数配置し相互接続することにより、空間的に十分なチェンバーの領域に渡った試験が行える。FPGAの論理設計を行う開発環境の整備に加え、VMEバス経由でPT7をプログラムするためのソフトウエアの開発なども進められてきた。これらの成果を日本物理学会で2度に渡り報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにモンテカルロシミュレーションによるデータを使い計算機上でトリガー論理の有効性を確認してきた。今後、雑音等を含む実データによる評価に移ることで研究期間内により具体的にトリガー性能を評価することができる。 ハードウエアによる実装の検討も進んでいる。必要な機能をすべて統合したプロトタイプFPGAモジュールはこれまでに完成しており、それらを複数接続したテストベンチを用いて計算機上で評価されたトリガー論理を実現する。それにより、アトラス実験に組み込むための実機の設計に必要な種々のパラメータの決定が可能になる。 これらの達成状況から、平成26年度を最終年度とする研究期間内に研究を完成させることが可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度にあたる。これまでに開発してきたトリガー論理評価ソフトウエアに、これまでアトラス実験で実際に取得されたデータを適用し、信号対雑音比が異なる状況でのトリガー性能の評価などを行い、トリガー論理のチューニングを進める。 平行してプロトタイプFPGAモジュールによるテストベンチを構築し、それまでソフトウエアで確かめてきた様々な入力データによる実証実験を行い、ハードウエア上での処理時間や、必要となるハードウエア資源量の評価などを行う。 これらの成果に基づき、実際のアトラス実験に組み込めるトリガーシステムの設計を進め、トリガー性能評価や詳細な設計仕様、ハードウエアデザインを含む提案書にまとめる。
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Research Products
(4 results)