2014 Fiscal Year Research-status Report
アトラスミューオンシステムのための超高分解能ハードウエアトリガー
Project/Area Number |
24540299
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 宏 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (80178574)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 辰男 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (80153021)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 陽子陽子衝突 / トリガー判定回路 / FPGA / 高速シリアル通信 / TCP/IP |
Outline of Annual Research Achievements |
高速トリガー判定用ハードウエアの開発のために最新のFPGAを用いた技術評価を行ってきた。トリガー判定のための大量の信号を供給する必要があることから、FPGAには高速シリアルリンクを用いてデータを供給する必要がある。単一のシリアルリンクを用いて6Gbpsでの安定なデータ転送をまず確認した。さらに4レーン同時の大量転送にも成功している。この結果、全体で24Gbpsの帯域での転送を確認した。データシート上は1レーンあたり12Gbpsの転送も可能であることから次にはそれに挑戦する。また、同時に、シリアル通信を導入したことによる遅延も問題になる。FPGAのコンフィギュレーションの調整の結果、遅延を60ナノ秒台に制限することに成功した。トリガー判定は25ナノ秒クロックで行われるため、3クロック以内の転送遅延に抑えられることが確認出来た。 FPGAに搭載された論理の処理内容をモニターし、判定パラメータを制御するため通常のネットワークプロトコルTCP/IPを採用する。SiTCPと呼ばれるIPコアを採用しその有効性を確認した。FPGAに直接物理層ICを接続することによりイーサネットに接続できる。ホスト計算機との間での1Gbpsでの通信を確認した。 トリガー判定のアルゴリズムについて、2012年までに取得されたATLAS実験のデータを元に解析を行ってきた。ルミノシティの増加に伴いトラック数の増大が見られる。また実験条件により雑音の状況も大きく変化している。将来の実験への応用を考えるとRUN2の実験データが評価に必要であるが、残念ながらRUN2の開始は2015年春に延期されたため、最終評価はRUN2のデータを待って行うこととなった。 ATLAS実験では本研究が対象とするトリガーアップグレードの検討が進行しており、本研究の成果を2015年度中に実験グループに対し提案する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリガー判定論理の開発についてはおおむね順調に進行している。判定アルゴリズムそのものは当初より確定しているがその評価を様々な状況を仮定して行う必要がある。シミュレーションでは広い範囲の粒子数やバックグラウンドの状況に応じて評価を行った。また、実際の実験データを用いた評価も行っている。ただし、用いられたデータがRUN1のもので衝突エネルギーが7TeV~8TeVのものである。そこから本研究が対象とする14TeVの状況を推測することは難しい。その評価には13TeVで行われるRUN2の実データが必要であるが、RUN2実験開始の遅れのため、この部分の評価だけが行われていない。 判定回路の実装に関してはプロトタイプを作成し様々な評価を行った。用いられる技術要素のすべてについて評価を完了している。この部分は順調に推移しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
LHCは無事13TeVでの加速器試運転を4月に開始した。5月からはデータ取得が開始されると思われる。この間にトリガー判定アルゴリズムの評価用ソフトウエアの整備を続け、実データが利用可能になり次第13TeV実データを用いたアルゴリズム評価を行う。 実装用ハードウエアプロトタイプの製作は完了しており、プロトタイプを複数台並べて実験状況を再現するテストベンチの製作が可能である。検討されたアルゴリズムを実際のハードウエアで稼働させ、実装上の問題、例えばエラー検出やその処理、内部に組み込むべきモニター機能等について検討する。 それらを元にトリガーシステムの提案書としてまとめ、2015年度中にATLAS実験グループに提出する。
|
Causes of Carryover |
当初予定ではLHC加速器は2014年まで改良工事及び調整運転を行い、2015年の初めより13TeVでの衝突実験を開始する予定であった。実験再開直後の実データを用いることで、本研究が対象とする14TeV実験の状況により近い評価を行うことを目標としてきた。加速器運転の予定が遅れ、実際には実験再開は2015年5月にずれ込んだため、年度内に13TeVデータを用いた評価を行うことが出来なかった。こららのデータは本研究の最終結果に必要なため、最終評価作業を平成27年度に繰り越すことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
トリガー判定アルゴリズム評価ソフトウエアの整備を続け、13TeVデータが利用可能になり次第判定アルゴリズムパラメータの決定を行う。その上でプロトタイプモジュールを複数台用いたテストベンチを構築し、論理評価とハードウエア実装の評価を行う。一部の作業には謝金を用意する。モジュールの組み合わせは決定されたパラメータに合わせることになる。テストベンチの作成に必要な追加の電子部品等の消耗品が必要となる。また、これらの結果から提案書を作成するがその過程で連携研究者等と綿密な打ち合わせが必要となる。そのための旅費や会議費を計上する。
|
Remarks |
本研究はOpen Source Consortium of Instrumentation (http://openit.kek.jp/)のプロジェクトとして遂行されている。
|
Research Products
(7 results)