2012 Fiscal Year Research-status Report
オンライン・ガスセルを用いたタングステン不安定核のレーザー核分光
Project/Area Number |
24540311
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
飯村 秀紀 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (10343906)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レーザー分光 / ガスセル / タングステン / 核半径 / 不安定核 |
Research Abstract |
本研究の目標は、加速器で生成されたタングステンの不安定核をガス中で捕獲してオンラインでレーザー分光する手法を開発し、それによってタングステン同位体間での核半径の変化量を決定することである。生成される不安定核は極微量であるので、出来るだけ高い検出感度の手法を開発する必要がある。 検出感度を上げるには、原子の基底状態からレーザー励起する手法が有効である。ガス中で捕獲されたタングステン不安定核は、ガス中に1秒間程度留まると予想される。その間に、原子の基底状態から励起するレーザー光を照射し続ければ、励起と蛍光放出による脱励起が繰り返され、強い蛍光シグナルが得られると期待できる。しかしながら、原子の準安定状態からの励起と異なり、基底状態からの励起には短波長のレーザー光が必要である。そこで、本年度はタングステン原子を基底状態からレーザー励起できる466nmの半導体レーザーを製作した。半導体素子には、メーカーで最近開発された青紫レーザー用の素子を用いた。これを自作の共振器に組み込むことで、出力約1mW、線幅約20MHzのレーザー光を発生させた。これは、タングステン原子のレーザー分光に使用可能な性能である。 一方、検出感度を上げるためには、測定のバックグラウンドを低減させることも必要である。特に、基底状態から励起した場合には、レーザー光と蛍光が同じ波長になるので、レーザーの散乱によるバックグラウンドを光学フィルターで除くことが出来ない。そこで、レーザー光を音響光学素子を用いてパルス化し、レーザーパルスがOFFの時間に蛍光を観測するシステムを製作した。これによって、バックグラウンドが低減出来ることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、タングステン原子を基底状態から励起するためのレーザー光を発生させることに成功した。これは、本研究の目標であるタングステン不安定核のオンラインレーザー分光を達成するのに鍵となる技術である。
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Strategy for Future Research Activity |
製作したレーザーを用いて、タングステン安定同位体の同位体シフトを測定する。この測定は、レーザーアブレーションでタングステンの試料を原子化することにより行う。次に、タンデム加速器でタングステン安定同位体のイオンビームをガスセルに入射する実験を行う。ガス中で捕獲されたタングステン原子にレーザーを照射して、共鳴蛍光を観測する。ガスセルを冷却するなどして実験条件を最適化し、高い測定感度を達成する。これらの成果を基に、核反応で生成されるタングステン不安定同位体のオンライン測定を行い、それらの同位体シフトを決定する。 また、半導体レーザーでは得られる波長が限られるので、線幅の狭い連続発振の色素レーザーを光増幅でパルス化することにより、実験に必要なレーザー光を生成することも試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
レーザーの運転に必要な消耗品や、ガスセル装置の試験・改良のための部品類を購入するのに使用する。また、レーザー増幅光学系を製作するのに用いる。その他、成果を学会で発表したり、連携研究者が実験に参加したりするための旅費として使用する。
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Research Products
(7 results)