2013 Fiscal Year Research-status Report
オンライン・ガスセルを用いたタングステン不安定核のレーザー核分光
Project/Area Number |
24540311
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
飯村 秀紀 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (10343906)
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Keywords | レーザー分光 / ガスセル / タングステン / 核半径 / 不安定核 |
Research Abstract |
本研究の目標は、加速器で生成されてターゲットから反跳したタングステン不安定核をガスセル中で捕獲し、それにレーザーを照射してオンラインでレーザー分光する手法を開発することである。タングステン原子の同位体シフトをレーザー分光で測定することにより、タングステン同位体間での核荷電半径の変化量を決定することが出来る。 この手法を開発する上で最も考慮しなくてはならない点は、生成される不安定核が極微量であるので、非常に高い検出感度が要求されることである。検出感度を上げるには、測定のバックグラウンドカウントを出来るだけ下げなくてはならない。本手法では、加速器のイオンビームがガスセルに入射するので、イオンビームとガスとの衝突で生じる光が大きなバックグラウンドとなる。これを抑制するため、本年度は、加速器のイオンビームをパルス化することを試みた。実験は、タンデム加速器でタングステン安定同位体のイオンビームをガスセルに入射することにより行った。加速エネルギーは、タングステン不安定核の反跳エネルギーを模擬するように設定した。イオンビームのパルス化は、ビームラインに静電デフレクタを設置し、これをON/OFFすることにより行った。イオンビームを20HzでON/OFFし、ビームOFF時に蛍光を観測した結果、バックグラウンドカウントは約1/50となり、この方法の有効性が実証された。 加速器を用いた実験とは別に、レーザーアブレーションでタングステン安定同位体の原子ビームを生成し、レーザー共鳴蛍光を観測することを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、強い蛍光信号を得るのに必要となる、タングステン原子を基底状態から励起するレーザー光を発振させることに成功した。また、加速器のイオンビームとガスとの衝突に起因するバックグラウンドカウントを減らす手法を開発した。これらにより、測定感度が大きく改善された。
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Strategy for Future Research Activity |
製作したレーザーを用いて、タングステン安定同位体の同位体シフトを測定する。測定は、先ずレーザーアブレーションで生成した原子ビームで行い、次に加速器でタングステンのイオンビームをガスセルに入射することにより行う。レーザー励起の遷移を変えて測定し、蛍光信号の強い遷移を選択する。また、ガスセルを冷却することでガス中の不純物を減らし、タングステン原子がそれらと結合して失われるのを防ぐ。これらにより実験条件を最適化し、より高い測定感度を達成する。これらの成果を基に、核反応で生成されるタングステン不安定同位体のオンライン測定を行い、それらの同位体シフトを測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、実験に用いるレーザー波長は色素レーザーを改造して発振させることを予定していたが、既設の半導体レーザーで発振させることが出来た。そこで、色素レーザーの改造の予算を、次年度に別の発振波長をもつ半導体レーザーの購入に変更した。 レーザー励起の遷移を変えて実験するために、異なった発振波長の半導体レーザーとそれに関連する光学系を購入する。また、ガスセル装置の試験・改良のための部品類を購入するのに使用する。その他、成果を学会で発表したり、連携研究者が実験に参加するための旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)