2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノコンタクトを利用した微小領域のエネルギーフローと単分子磁石の研究
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24540314
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 洋一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50126009)
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Keywords | ナノコンタクト / 熱伝導 / 単分子伝導 |
Research Abstract |
(1)前年の積層型MBJは繰り返し耐性に難があることがわかり、別法としてElectromigrationによるAu-C60-Au単分子トランジスタの作製を試みた。高い歩留まりで量子抵抗以上の接合を作製することができ、クーロンブロッケード様の電流-電圧特性を示すものも得られたが、明瞭なゲート電界効果は観測できていない。 (2)局所過熱による超伝導転移を調べるために、インジウム、鉛のMBJ試料の作製を行ったが、まだ低温での測定には至らなかった。またバナジウムでも同様の試料作製を試みたが真空蒸着と微細加工による膜質の劣化により超伝導転移する試料を得ることができなかった。一方ニオブについてはリフトオフ用レジスト構造を工夫し、約5Kの臨界温度を持つ細線の加工工程を確立した。 (3)接合近傍の格子温度を知るための温度センサーの開発を進めた。当初蒸着と酸化を繰り返して得られる金属グラニュラー薄膜を検討したが、安定性に問題があり断念した。これに代わり半導体・金属混合膜を検討し、室温以下の各温度領域で感度を有する薄膜の作製条件をほぼ求めた。現在その微細化を進めている。 (4)関連する研究の過程で希釈冷凍機の改造を行い、ヘリウム圧力を利用した極低温XYステージと変位センサーを開発した。MBJ実験にも使用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
専攻校務のため十分多くの時間を研究に充てることができず遅れてしまった。2年間の役職任期を終了したので次年度には遅れを挽回するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であり当初計画の達成に努める。 (1)インジウム、鉛、ニオブのMBJ実験を行い、超伝導ナノコンタクトのIV特性から常伝導への転移が起きる臨界電力を決定し、各系における電子系の過熱を議論する。 (2)アルミニウム-MBJの接合部位の両近傍に微小温度センサーを配置した試料を作製し、希釈冷凍温度域でMBJ実験を行う。Al接合に大きなバイアス電圧を加えた時の温度上昇を調べ、発熱の対称性、電子温度と格子温度の関係についての知見を得る。また一方の温度計をヒーターとして用いることで、接合の熱伝導と接合抵抗の関係を調べる。 (3)さらにSMM、C60 などの分子で修飾した接合について、同様の実験を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低温実験装置の改造は一部行ったものの超伝導マグネットを自作する時間的余裕がなく、超伝導線材の購入は行わなかった。計測用PC(Windows7)の購入は別予算で行うことができた。以上が主な理由である。 リソグラフィーや真空蒸着などの試料作成のための消耗品、学会発表に伴う旅費に使用する。また試料作製プロセスの一部は、オープンファシリティを使用するためその利用料の支出を予定する。
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