2012 Fiscal Year Research-status Report
高強度中赤外光を用いたタンパク質の光誘起構造ダイナミクス研究
Project/Area Number |
24540323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 亮介 大阪大学, 産学連携本部, 特任講師 (70379147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超高速分光 / タンパク質 / 反応制御 |
Research Abstract |
タンパク質の超高速反応は、発色団(反応分子)と周囲のアミノ酸残基との水素結合ネットワークによって巧みに制御されている。本研究では、光受容タンパク質の光異性化反応途中において、高強度中赤外光を照射することで、水素結合ネットワークの一部を選択的に励振する。その後の光反応過程や振動モードの変化を観測することで、超高速反応を実現しているプロトン移動と構造異性化との協調機構を解明することを目的としている。 初年度は、(1)フェムト秒誘導ラマン散乱測定によって、光反応初期過程において重要となる水素結合ネットワーク変化の観測、及び(2)可視中赤外高精度マルチパルス分光システムの構築を行った。(1)に関しては、光受容タンパク質PYPの超高速ダイナミクスを、誘導ラマン散乱測定によって世界で初めてとらえることに成功した。水素結合ネットワークを改変した変異体との比較により、励起直後において水素結合ネットワークが超高速で変化する様子を明確に観測した。(2)に関しては、可視~中赤外までの波長帯域における様々な組み合わせが可能なマルチパルスポンプ・プローブ分光システムの構築を行った。電子励起あるいは振動励起による微小な変化を高感度検出するため、レーザーの繰り返しである1kHzにすべてのシステムを同期させた。次年度以降の研究のための準備がこれですべて整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初実施予定としていた(1)フェムト秒誘導ラマン散乱測定によって、光反応初期過程において重要となる水素結合ネットワーク変化の観測、及び(2)可視中赤外高精度分光システムの構築のうち、(1)については当初の計画以上に進展したと自己評価できる。光受容タンパク質の励起直後における誘導ラマン信号を初めて捉えただけでなく、電子励起状態における誘導ラマン信号の新しい観測方法を提案・実証できたことは想定以上の成果である。(2)については、可視中赤外マルチパルス分光システムの構築が計画通りほぼ完了し、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、構築した可視中赤外高精度マルチパルス分光システムを用いて、光受容タンパク質の反応初期過程の基本データを取得し、すでに得られている誘導ラマン散乱の結果と比較する。次に、高強度中赤外光を用いて、光反応初期過程において重要な役割を担っている水素結合ネットワークを励振し、その後の反応過程へ及ぼす影響を評価する。順調に微小変化をとらえることに成功すれば、高強度中赤外光のパルス特性の効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)