2014 Fiscal Year Annual Research Report
高強度中赤外光を用いたタンパク質の光誘起構造ダイナミクス研究
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24540323
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 亮介 大阪大学, 産学連携本部, 特任講師 (70379147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超高速分光 / タンパク質 / 反応制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の超高速反応は、発色団(反応分子)と周囲のアミノ酸残基との水素結合ネットワークによって巧みに制御されている。本研究では、光受容タンパク質の光異性化反応途中において、高強度中赤外光を照射することで、超高速反応を実現しているプロトン移動と構造異性化との協調機構を解明することを目的としている。 昨年度までに構築した「可視-中赤外高精度マルチパルス分光システム」を用いて、光受容タンパク質PYPの光反応に伴う構造変化について研究を行った。近紫外パルス光で光反応を開始させ、タイミング制御された中赤外光を照射し、光反応の変化を広帯域白色光で探査した。照射した中赤外光の周波数は1100~1800cm-1の範囲でチューニングし、タイミングは反応開始後0.2ps~1nsの範囲で変化させた。このパラメータ空間は以下の反応過程をカバーすると予想される:電子励起に伴う水素結合ネットワークの変化、プロトン移動および構造異性化による初期反応中間体の生成、さらに続く第二反応中間体の生成。しかしながら、中赤外光照射による反応過程の変化(促進・抑制・分岐など)は本システムの測定精度(< 10<SUP>-4</SUP>)では有意な差として現れなかった。 反応制御には至らなかったもの、本研究手法によりPYP初期状態における振動エネルギーフローを明らかにする、という予想外の成果が得られた。1100~1800cm-1の範囲の中赤外光によって特定の振動を励起し、その後のエネルギーフローを広帯域白色光で探査することにより、発色団に関連する一連のエネルギーフローを浮き彫りにすることができた。発色団のモード間相互作用や、周辺アミノ残基から発色団への振動エネルギー移動など、タンパク質の高効率反応過程を理解する上で重要な素過程を明らかにすることができた。
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Research Products
(8 results)