2013 Fiscal Year Research-status Report
X線発光分光によるペロブスカイト型誘電体の電場印加条件下の価電子帯異方性の観測
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24540325
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 伸夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90302017)
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Keywords | オペランド分光測定 / 価電子帯異方性 / X線発光分光 |
Research Abstract |
研究代表者は、ペロブスカイト構造をもつチタン酸化物について、チタン酸バリウムの誘電特性と局所構造の関係を放射光X線を用いた発光分光法により調べてきた。チタン酸バリウムは自発分極をもつ強誘電体の典型物質である。これまでに、温度変化や外部電場に対する変化を、発光スペクトルに現れる微小な形状変化として捉えることに成功している。この手法を強誘電体だけではなく、自発分極を持たない常誘電体にも適用し、外場(温度・電場・紫外線照射)に対して、局所的な分極(電気双極子)の応答を発光スペクトルの変化として捉えることが本研究の狙いである。これは、近年オペランド分光法としても知られている電場印加による電子デバイス動作下での電子状態手法の一部でもある。 本年度までに、チタン酸バリウムと同じ結晶構造をもつチタン酸ストロンチウムの電場印加下における電子状態変化を詳細に調べてきた。昨年度までの研究成果と合わせて、大きく分けて2つの成果が挙げられる。一つ目は、チタン酸バリウムのX線発光分光測定の結果を共同研究者とともに理論的な電子状態に関する考察を深めたことにある。局所的な誘電分極が変化することと、スペクトルの2つの特徴的なピーク構造の変化を初めて理論的に解明した。(Phys. Rev. B, 86 (2012) 224114, 査読有)。 もう一つは、極低温の量子常誘電相にあるチタン酸ストロンチウムに紫外線照射で誘起された局所分極の存在を初めて明らかにしたことである(J. Phys. Soc. Jpn., 82 (2013) 053701, 査読有)。この局所分極は、SPring-8の集光ビームを使ったオペランド条件下での測定により、電場印加により配向する様子が明確になった。この結果は、チタン酸ストロンチウムで見つかっているさまざまな物理現象(誘電異常、可視発光特性、二次元電子ガス、高い熱電変換指数)と密接に関係していることを初めて実験的に明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書ではチタン酸バリウムを母物質とした研究を当初に行う予定であったが、大型放射光施設(SPring-8)の課題採択の結果と、概要で述べた独自の装置の立ち上げ準備の必要性から、チタン酸ストロンチウムの研究を先に行っている。電場印加したオペランド条件下では、このチタン酸ストロンチウムでも異方的な電子状態が観測されており、こちらを詳細に調べることで、研究目的に掲げたペロブスカイト酸化物中の「酸素八面体歪」と電子状態の関係を考察することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られているチタン酸ストロンチウムの結果を引き継いで、さらに面方位の異なる試料を用いて、多重条件下(極低温+紫外線+電場印加)での共鳴X線発光分光実験を行う。夏前までにSPring-8のマシンタイムを述べ5日間確保している。さらに、放射光実験で用いた同一試料を用いて、誘電率測定も行い、ミクロおよびマクロな物性を統一的に結論する。
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Research Products
(18 results)