2012 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトニアン・リウビリアンの複素固有値問題による1次元電子カシミール効果の理論
Project/Area Number |
24540327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10264821)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(イタリア) / 国際研究者交流(米国) / 量子光学 / 非平衡統計力学 / 物性理論 |
Research Abstract |
1次元半導体上に離れて置かれた不純物原子間に対して、半導体伝導体を介した電荷移動によって生じる力を、電子的カシミール力として定式化した。基底状態は連続電子場との結合によるドレスト状態であるが、不純物周りに生じた仮想電子雲の重なりによって引力が働く。この力は、伝導体電子の有効質量が有限であることから、原子間距離に対して指数的に減衰することを示した。これは、質量ゼロの電磁場によるカシミール力がベキ減衰を示すことと対照的であることを明らかにした。一方その減衰率は、バンド下端に現れる束縛状態とバンド端とのエネルギー差によって決められるため、bare 状態の不純物エネルギーが変わることにより減衰率が変化することを示した。 特に、1次元系では、バンド端の状態密度がVan Hove特異性により発散するために、カシミールエネルギーを摂動論を用いて求めることができない。本研究では、電子的カシミールエネルギーを非摂動論を用いて求めた。特に、Van Hove特異性によって、バンド端下には、不純物エネルギーの値によらず永続的な束縛状態(PBS)が現れる。電子がPBS状態にある時には、電子的カシミール力が非常に長距離にまで及ぶことを明らかにした。 また、電子的カシミール効果が、Radiation reactionの立場から解釈できることを示し、vacuum fluctuationの考えは必要とされないことを明らかにした。ただし、本研究で扱うフェルミ粒子に対しては、場の演算子順序を変えることにより、Vacuum fluctuationの寄与を示した。 これらの研究を、海外協力研究者であるテキサス大学オースチン校(アメリカ)のTomio Petrosky博士とパレルモ大学(イタリア)のRoberto Passante博士を招聘し、協同で研究を進めた。 研究成果は、物理学会での講演発表、論文発表にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、当該年度の主たる目的は、電子的カシミール効果を非摂動論的に取り扱い、1次元系特有のVan Hove特異性に基づくPBS状態におけるカシミール効果を明らかにすることであった。この目的は達成され、論文執筆し、ほぼ投稿段階にある。 もう一つの目的は、共鳴状態における電子的カシミール効果を複素固有値問題の視点から明らかにすることであるが、この課題に関しても、ほぼ計算を終了し、その結果を物理的に解釈した結果をまとめている段階である。2014年9月に行われる秋の物理学会にて結果を発表する予定であり、今年度中に論文公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
共鳴状態における電子的カシミール効果を明らかにする。現時点で得られているPrimitiveな計算結果によると、安定原子位置が周期的に存在し、その周期性はバンド端と共鳴状態のエネルギーの実部の差によって決まることが明らかにされている。これは、共鳴状態における電子的カシミール効果が、分岐点効果によるものであることを示唆している。電子的カシミール効果に対する分岐点の寄与と共鳴極の寄与を分離して論じるために、複素固有値問題を完全に解く。 更に、原子自由度まで含めた、全系の時間発展を、固有関数展開の方法を用いて明らかにする。 特に、今後の研究の中心テーマの一つは動的カシミール効果である。動的カシミール効果は、時間的に変化する外部摂動を系に加えた場合に、真空電磁場の中から実光子が発現する現象である。本研究では、純粋電子系で生じる動的カシミール効果を明らかにする。特に、virtual quantaからreal electronへの転換過程を明らかにする。すでにわれわれは、時間周期的に不純物準位が変化させられた場合の複素固有値問題の解をフロケーの方法を用いて得ているが、これを、電子的カシミール効果の解析に対して適用することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に、国際協力研究者であるパレルモ大学(イタリア)のRoberto Passante博士を招聘する予定であったが、先方の都合がつかなくなり見送った。次年度において、Roberto Passante博士を招聘し、共鳴状態における電子的カシミール効果および動的カシミール効果におけるvirctual cloudからreal electron への転換過程について共同研究を行うために、研究費を使用する。
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Research Products
(12 results)