2013 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトニアン・リウビリアンの複素固有値問題による1次元電子カシミール効果の理論
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24540327
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10264821)
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Keywords | カシミール効果 / 国際研究者交流(イタリア) / 国際研究者交流(米国) / 量子光学 |
Research Abstract |
1次元半導体上に離れておかれた不純物原子核間に、半導体の伝導帯を介した電荷移動によって生じる力は、電磁場を介して原子間に働くカシミール力と本質的に等価な現象であることから、われわれは、この引力相互作用を電子的カシミール効果と名付け、その特徴を明らかにしてきた、特に、H24年度までで、不純物準位のエネルギーがバンド外にある電子的束縛状態におけるカシミール力が、原子間距離に対して指数減衰することを示した。 H25年度は、更に、不純物準位エネルギーが伝導帯内に位置し、共鳴状況下における電子的カシミール効果に対して研究を進めてきた。共鳴状態におけるカシミール効果の評価に対しては、本来、共鳴状態そのもののの波動関数が、ヒルベルト空間に含まれていないため、その定義すら不確定であった。そもそも、共鳴状態に対する波動関数がどのように表現されるかが明らかにされねばならない。本研究では、拡張ヒルベルト空間における複素固有値問題を解き、複素固有状態として共鳴状態を求めた。摂動論的な近似のもとで、電子的カシミール効果は原子間距離に対して振動的振る舞いをすることを明らかにした。 1次元系においては、低次元特有のVan Hove特異性が状態密度に現れる。この特異性が重要な働きを演じる共鳴状態に対して、非摂動論的に特性方程式を解くことにより共鳴状態を求めた。この非摂動論的共鳴状態については、その崩壊係数が結合定数に逆比例するという特異な崩壊課程(超崩壊状態)が現れることを見出した。この超崩壊状態の時間発展への寄与を明らかにしている。 これらの研究成果は、日本物理学会で発表し、現在論文投稿の準備に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共鳴状態におけるカシミール効果への研究の発展に関しては、計画通りに進行している。しかしながら、特性方程式の解を非摂動論的に求めると、通常の摂動論的に得られる共鳴状態以外に多くの超崩壊状態が現れることを発見したために、この超崩壊状態の特徴を同定することに注力したため、原子核観への力であるカシミール力自体の評価が十分ではない。 ふたたび、カシミール効果の評価を行う方向へ研究の流れを戻すように努める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、摂動論的に得られる共鳴状態におけるカシミール効果について、その原子間距離依存性を明らかにする。現在までの研究から、非共鳴状態においては、連続場が有効質量を持つことにより。カシミール効果の原子核観距離依存性が指数減衰することが分かっているが、共鳴状態においては、これが無限遠方まで減衰すること無く振動的振る舞いを示すことが明らかにされつつある。非共鳴域から共鳴域への転移に伴い、不純物周りのcloudがどのように変化するのかを明らかにし、カシミール力の特徴を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際研究協力者であパレルモ大学(イタリア)のRoberto Passante博士を招聘するため日本研究費を使用する予定であったが、Passante博士は別件により旅費を調達することとなったため、急遽、本科件費を使用すること必要が無くなったため。 今年7月13~18日、Wroclaw, Polandで開催される蛍光に関する国際会議ICL'14に参加し、本研究成果を発表する予定である。この国際会議への参加費、旅費に使用する予定である。
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Research Products
(23 results)