2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザーパルス誘起吸着分子のダイナミクス:非弾性光電子分光による追跡
Project/Area Number |
24540332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
荒船 竜一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50360483)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面分光 |
Research Abstract |
光電子分光において、フェルミ・レベル近傍の光電子は弾性的に放出されたものであると仮定されている。しかしながら、光電子の放出プロセスを詳細に考えると、固体表面を横切る光電子は表面素励起と相互作用し、励起した振動エネルギー分のエネルギーを失うはずである。実際に、CO吸着金属表面において、この相互作用の結果により光電子スペクトル中にステップ構造がみられることが確認されている。このステップ位置は吸着種の振動エネルギーに対応したものである。 この非弾性光電子放出過程を利用した分光法は過去に例をみないものであり、SFG分光では検出できない吸着分子の束縛モードを検出できるなど、新たな振動分光法として期待される。 本研究では新奇振動分光法のさらなる発展を目的として、CO/Cu(001)表面の非弾性光電子分光スペクトルの角度依存性を測定した。得られた光電子スペクトルにおける非弾性放出成分の解析から、CO/Cu(001)表面にFRモード、分子内振動の分散について検証した。 「非弾性角度分解光電子分光」が可能であることを実証した研究である。併せて2光子光電子分光の高分解能化をおこなった、この高分解能化はそれ自体興味深い研究であるだけではない。2光子光電子分光は本研究で目的としている非弾性光電子分光を用いた時間分解測定においても時間原点を実験的に決定するために、この高分解能化、高精度化は本研究においても重要な意味を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光遅延ラインを導入できた。二光子光電子分光測定から、1 ps程度の精度で振動ダイナミクスを追跡できると評価した。さらに角度分解測定を行うことができるようになったことも特筆すべき成果の一つである。これにより表面フォノンもしくは吸着新同種の分子振動のcollective modeにおける分散関係を観測できる可能性を切り開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には交付申請書の通りにすすめることができる。大きな阻害要因はないと考えているが、研究システム一式を移設する必要にせまられたため、その復旧に少し時間がとられるのことを心配している。 CO 分子を用いた束縛回転モードの緩和プロセスを分光学的に追跡する。これまでの結果を受けてまず励起赤外光パルスの強度を上げ分子脱離現象において束縛回転モードの励起およびエネルギー散逸がどのようにかかわるのかを追跡する。さらにfsレーザーの導入を行い、時間分解能のさらなる向上を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光学部品に一部使用予定。
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Research Products
(8 results)