2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機色素ナノファイバーによる励起子ポラリトンの室温ボーズ・アインシュタイン凝縮
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24540333
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
高澤 健 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主幹研究員 (10354317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ボーズ凝縮 / 励起子ポラリトン / ナノファイバー / 有機色素 / 光共振器 / 光物性 / レーザー分光 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、有機色素ナノファイバーを用いて室温で励起子ポラリトン(EP)のボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)を実現することである。我々はこれまでの研究で、有機色素チアシアニン(以下TC)を自己組織化させて合成したナノファイバーが、光励起で生じたEPを室温でミリメートルに亘って伝搬する新現象を見出した。本研究ではまず、ナノファイバー中にEPの閉じ込めが可能な共振器を作成する。共振器中に光励起により生じたEPを高密度に閉じ込めてBEC状態を生成し、発光スペクトルの顕著な狭幅化を観測することで確認する。これまでの研究で、室温BECを達成するために必要な、高性能なEPリング共振器の開発に成功した。25年度は、リング共振器をパルスレーザー光で強励起し、リングからの発光スペクトルを測定することでBEC状態の検出を試みた。レーザー強度とレーザーパルス幅を変化させながら実験を行ったが、BEC状態の生成を確認することはできなかった。BEC状態の実現が困難である原因の一つは、強励起で分子の劣化が速やかに起こるためである。そこで26年度は、より分子劣化が生じにくい冷却下でBEC状態を実現することを試みた。冷却ステージを分光装置に組み込み、液体窒素温度までの試料冷却が可能な顕微分光装置を製作した。冷却下では分子の光劣化が著しく軽減されることを確認した。冷却した試料を強励起し、BEC状態の実現を目指した実験を継続中である。また、低温での顕微分光測定が可能になったことで、ナノファイバー中のEP伝搬について新たな発見があった。冷却によりポラリトンの分散曲線が顕著に変化し、液体窒素温度では幅100nm程度の極めて細いナノファイバーでも、高効率なポラリトン伝搬が生じることを見出した。これは、ナノファイバーを用いた新規なナノスケール光操作が液体窒素温度程度の実用温度領域で可能なことを示している。
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Research Products
(4 results)