2012 Fiscal Year Research-status Report
フラストレート磁性体の磁場中異常量子現象に関する大規模並列計算による理論的研究
Project/Area Number |
24540348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中野 博生 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (00343418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
轟木 義一 千葉工業大学, 工学部, 助教 (40409925)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子スピン系 / ハイゼンベルク反強磁性体 / 厳密対角化法 / 大規模並列計算 |
Research Abstract |
磁性体では系の性質に起因して様々な特徴的な振舞が現れる。特に、フラストレーションを有する量子スピン系では、そのフラストレーションによって量子揺らぎが増大し、それが原因となって、しばしば古典系とは異なる様子がしばしば現れる。本研究では、量子系の理論模型に対し、偏りのない直接数値シミュレーション方法である数値対角化法を用いて、そのような非自明な振舞いとその発現機構の解明を目的としている。2012年度、構成スピンの大きさがS=1である量子スピンの三角格子ハイゼンベルク反強磁性体の性質を調べた。古典スピン系では、等方的な三角格子反強磁性体が120度構造と呼ばれるスピン構造を示し、相互作用が異方的となる場合に隣接スピン間の角度が徐々に変化していくことが知られているが、S=1スピンの量子系では、2次元フラストレート系であるがゆえに、直接数値シミュレーションの方法である量子モンテカルロ法や密度行列繰り込み群法の適用が難しい状況であり、近似を用いない方法から確実に確かめられた知見はほとんどなかった。我々は、まず、等方的な場合のスピン構造を調べた。東大情報基盤センターで2012年度に運用を開始たばかりのスパコンを占有利用し、世界で初めて27個のスピンの系の計算に成功し、その結果を用いて、120度構造の長距離秩序の秩序変数の定量的な評価に成功した。さらに、異方的な場合に、この構造の長距離秩序がどのように消失していくのかを詳しく調べ、その様子を明らかにした。この様子は、古典スピン系で知られていた上述の振る舞いと異なり、また、比較的良く調べられているS=1/2スピンの量子系で報告されている、複数のシナリオとも異なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元フラストレート磁性体の代表格である三角格子反強磁性体について、構成スピンがS=1である場合の振る舞いは、量子スピン系におけるフラストレーションの効果を明らかにし、深く理解していく上で、基本的な知見となる。スピンの大きさが、S=1/2の場合よりも大きなS=1のスピンの場合は、計算コストの制約から、S=1/2の場合に比べて更に小さい系しか取り扱うことができず、この系の様子を捉えることは非常に困難であったが、これまでに行われていないシステムサイズの計算を実施し、これを成功させたことで、得られたデータから系統的なシステムサイズ外挿が可能であることが初めて分かった。世界記録となるこの計算は、プロジェクトの一環として計画的に進められてきたものであり、それが成功理に完遂したことは、プロジェクト推進が概ね順調に進展していると判断した理由となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元フラストレート系として、これまでに取り組んできたカゴメ格子や、2012年度に重点的に取り組んだ三角格子の場合に加えて、それとは異なる、新たな格子形状の系について、無磁場下での基底状態の振る舞いや磁化過程の様子についても調べる。これまでに様々な視点から調べられてきたカゴメ格子反強磁性体や三角格子反強磁性体などで分かっている知見と比較し、共通な特性と異なる振舞を解明し、量子スピン系におけるフラストレーション効果の理解に貢献する知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者と研究打ち合わせは24年度に複数回実施したが、予定変更などのため、計画していた回数の全てを実施することが出来なかったことから、24年度分に繰越が発生した。三角格子や新たな格子について、25年度の早い段階から、研究打ち合わせを実施する。本研究で得られた成果は、日本物理学会や米国物理学会、その他関連する研究集会で速やかに公表する。そのための出張旅費を本研究費から支出する。また、印刷論文として投稿していく予定であり、投稿掲載料、英文校閲料、別刷代などの経費を本研究費から支出する。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Crystal structure and magnetic properties of honeycomb-like lattice antiferromagnet p-BIP-V22013
Author(s)
H. Yamaguchi, S. Nagata, M. Tada, K. Iwase, T. Ono, S. Nishihara, Y. Hosokoshi, T. Shimokawa, H. Nakano, H. Nojiri, A. Matsuo and K. Kindo, and T. Kawakami
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 87
Pages: 125120(1-8)
DOI
Peer Reviewed
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