2014 Fiscal Year Annual Research Report
一次元競合系におけるスピンネマチックラッティンジャー相のNMR・μSRによる探索
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24540350
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄男 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40327862)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピンネマチック / フラストレーション / 一次元競合鎖 / 量子スピン系 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
1次元競合鎖Rb2Cu2Mo3O12は強磁性的最近接交換相互作用(J1=-138 K)と、それに競合するantiferroの第二近接交換相互作用(J2 = 51 K)を持ち、低磁場域でスピン密度波(SDW)相が、飽和磁場付近の高磁場域では多極子Tomonaga-Luttinger液体(TLL)が実現するとHikiharaらによって理論的に示されている。しかし、後者の多極子TLLは4体以上のスピン相関関数で表されるため、実験で直接検出することは非常に困難である。近年、NMR緩和率T1測定により、多極子TLLを検出できるという理論がSatoらにより提唱された。すなわち、多極子TLLでは、低磁場域(SDW相)においては通常のTLL状態と同じように核磁気緩和率1/T1は低温で発散するが、高磁場域(多極子TLL相)では1/T1は温度と共に減少するという特徴的な振る舞いを示すと予想される。我々はこれを利用して、Rb2Cu2Mo3O12のNMR測定を行い、多極子TLLの検出を試みた。 固相反応法で作製した粉末試料を用い、 5~12Tの磁場範囲でNMRスペクトルと縦緩和率の温度依存性を測定した。5-10Tの低磁場域では、1/T1はTのべきで表わされ、TLLとしての振る舞いと一致する。しかし、飽和磁場11.5T直下において、低温での発散傾向は弱くなり、低温まで殆ど温度依存しなくなる。この振る舞いは、TLパラメタの値が高磁場でK<1/2となったことより、低温での発散項が消えた可能性を示している。つまり、磁化飽和直前のごく狭い磁場域においてネマチック-TLLが実現している可能性があると考えられる。
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