2012 Fiscal Year Research-status Report
超低温高圧多重極限環境における重い電子系物質の新しい量子相転移の研究
Project/Area Number |
24540367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
阿部 聡 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (60251914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 宏一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (10219496)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 低温物性 / 超精密計測 |
Research Abstract |
本研究では,超低温極限環境における重い電子系物質の量子相転移にともなう量子臨界現象を,熱膨張・磁歪測定および磁化・帯磁率測定により解明することを目的としている。また,高圧環境での測定あるいは元素置換による量子臨界現象の圧力効果および強磁場環境による量子臨界現象の磁場効果の測定から,多重極限環境での量子臨界現象の解明を目指している。 典型的な重い電子系物質であるCeRu_2Si_2は,負の圧力領域に反強磁性量子相転移点を持つことが知られているが,これとは異なる新しい量子臨界現象が超低温で現れることを我々はこれまでに見いだした。CeRu_2Si_2は強い磁気異方性を持つため,この超低温での新奇量子臨界現象を解明するため,今年度は,10mK・9Tまで超低温・強磁場環境を拡張し磁気容易軸に垂直方向であるa軸の熱膨張・磁気歪測定を,分解能ΔL(B,T)/L(B,T)~10^(-10)という極めて高精度に行なった。 熱膨張測定の結果は,a軸方向においても約100mK以下で熱膨張係数に負の非フェルミ液体的な量子臨界現象があらわれ,臨界寄与の大きさはc軸の場合と同程度である。一方,磁歪測定の結果は,9Tまでメタ磁性転移を示さず磁歪係数はc軸の約1/800であり強い異方性を示した。しかし,100mK以下の温度では約0.5T以下の低磁場で負の磁歪係数が現れ,温度低下に伴い顕著になることから,非フェルミ液体的な量子臨界現象であると考えられる。磁気難易軸方向においても容易軸方向と同程度の量子臨界効果が現れることから,超低温領域では新しい量子相転移が出現することを強く支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超低温極限環境における新しい量子相転移の研究として,これまで0.05テスラに限られていた測定磁場を9Tまで拡張し,これまでほとんど測定が困難であった磁気難易軸方向の微小な磁歪を精密測定可能にした。その結果,100mK以上の高温領域では強い磁気異方性を示し,これまでに知られている反強磁性量子臨界と一致するが,100mK以下で顕在化する量子臨界現象の磁気異方性は小さく新しい量子相転移点に起因することが明確になった。さらに磁場の増加により磁歪係数の符号が負から正に遷移する過程を精密測定することができ,磁場制御の量子臨界現象であることを明らかにした。これらの結果は,研究目的の達成に大きな進展をもたらした。一方,高圧極限環境の開発については,従来予想されていたことではあるが,ヘリウム圧力媒体による高圧生成方法の技術的・法令面での困難さから開発方法を一部変更せざるをえず,これらは次年度へ継続して実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに,超低温領域での新しい量子臨界現象の磁気異方性は小さいことを明らかにしたが,磁場に対して平行な方向の熱膨張・磁歪しか測定できていないため,磁場と垂直方法に熱膨張・磁歪測定セルを設置した測定を実施し,新しい量子臨界現象の軸方向依存性を解明する。また,圧力環境開発は圧縮機を用いた方法とは別に,低温吸着方法による昇圧を試みると同時に,正の化学圧力効果をもたらす元素置換系試料の測定にる量子臨界現象の圧力依存性測定を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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