2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540370
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森成 隆夫 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70314284)
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Keywords | ディラック電子 / 有機導体 |
Research Abstract |
圧力下でディラック電子系となる有機導体α-(BEDT-TTF)2I3については,どのようにしてディラック電子系が実現しているか,その機構が明らかにされていない.この問題について,有機導体で重要な役割を演じるサイト間のクーロン相互作用を取り入れた拡張ハバード模型の解析を行った.平均場近似を適用し,交換相互作用効果から生じるホッピングパメータのくりこみ効果によるディラック電子の安定化機構を提案した.ディラック電子を安定化させるホッピングのパラメータ領域が,実空間でπのフラックスを生じさせることで増大することを見出した.特に,三角格子上ではストライプ状のフラックスパターンを形成するという興味深い結果が得られた.このようなフラックスパターンの生成において,ホッピングパラメータの値に違いがあるということが非常に重要である.この点については,拡張ヒュッケル法などから評価されたホッピングパラメータからも示唆されていることであり,有機導体におけるホッピングパラメータの特徴とよく整合する結果といえる.この他,有機導体で実現しているディラック電子系は,グラフェンと異なり層間の相互作用が存在する.この問題について,層間の相互作用を取り入れた解析を行った.磁場下において面内の交換相互作用と面間の 反強磁性相互作用を平均場近似で解析し,どのようなスピン状態が実現するかを明らかにした.有効g因子が低温で小さくなる効果を見出したが,これはグラフェンと定性的に異なる結果であり,実験結果とも一致する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機導体でのディラック電子系に関して最大の問題のひとつは,ディラック電子の生成機構の解明である.この問題について,実空間フラックス生成による成果を得たが,この結果は有機導体の特徴を反映したモデルに基づく結果であることから,生成機構を考える上で重要な成果といえる.また,有機導体で実現しているディラック電子系における輸送現象において,面間の伝導でスピンがフリップする効果の存在が実験から示唆されている.この問題を考える上で,層間の反強磁性的相互作用効果を解析することが非常に重要になる.層間相互作用を考慮して,系全体のスピン構造を決定することができたことで,面間の輸送現象を解析するための重要な基礎を構築することが出来たといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
有機導体の特徴を有したモデル系で,実空間のフラックス生成によるディラック電子系の安定化機構を見出したが,ディラック電子系が実現している有機導体のモデルにこの効果を取り入れることで,ディラック電子の安定化機構が明らかになる可能性がある.この問題について研究を進める.また,層間の相互作用効果の解析から層間のスピン状態が明らかになったので,この結果を基に層間の電子のホッピング過程におけるスピンフリップの可能性を検討する.相互作用効果や平均場による効果を取り入れて,面間磁気抵抗を久保公式を用いて計算する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた国内出張を取り止めたため. 取り止めた国内出張を次年度に行う.
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