2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24540370
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森成 隆夫 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70314284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディラック電子 / 面間磁気抵抗 / カイラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
層状のディラック電子系である有機導体α-(BEDT- TTF)2I3において,ディラック電子の特徴は面間磁気抵抗に現れる.面間磁気抵抗の磁場依存性は,主にディラック電子系特有のエネルギーゼロのランダウ準位の効果によって説明できる.この面間磁気抵抗にスピン反転効果が存在することが実験的に示唆されていた.通常,面間の電子のホッピングではスピンは反転しない.そのため,単純なディラック電子のモデルでは理解することができない.この問題について,層間のクーロン相互作用に着目した解析を行った.少数キャリア系であることから,層間のクーロン相互作用における遮蔽効果がほとんど存在しないため,スピン反転を生じさせる平均場が現れる.この効果を取り入れて,久保公式を用いて磁場下での面間の伝導率を計算し,実験結果と良く一致する結果を得た.また,固体中のディラック電子系においては,電子はカイラリティの自由度を有する.電荷とスピンの自由度のほかに,左巻きか右巻きかの自由度がある.このカイラリティ効果によって,たとえば不純物散乱では後方散乱が抑制される.ディラック電子系の超伝導状態におけるカイラリティ効果について,有機導体α-(BEDT-TTF)2I3のようなディラック電子系と,ディラック電子系ではないが鉄系超伝導体の電子のようにカイラリティで特徴付けられる電子状態が存在する場合に,超伝導ギャップ方程式の解析を行った.その結果,カイラリティ効果により超伝導ギャップ関数にノードが生成される機構が存在することを明らかにした.
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