2013 Fiscal Year Research-status Report
鉄テルルセレン超伝導体の鉄とテルル双方のメスバウアー効果による磁性と超伝導の関係
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24540371
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北尾 真司 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00314295)
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Keywords | 鉄系超伝導 / メスバウアー分光 / 磁気秩序 / 核共鳴散乱 |
Research Abstract |
鉄テルルセレン化合物の試料作製条件の確立および試料評価を行い、純良な試料作製法についてはほぼ問題なく作成可能とすることができた。さらに、鉄57およびテルル125で同位体濃縮した試料を作製する際には試薬を少量しか使用できない条件で、なるべく大きな単結晶を作成する必要があり、さらなる試作を重ねることで、より効率よく良質な試料作製が可能になる条件が確立されつつある。 作製した試料について、鉄57メスバウアー分光の詳細な温度変化の測定を行い、磁気秩序に伴う複雑な磁気構造の変化についての解明を行ってきた。それにより電子状態や磁気モーメントの磁気秩序における複雑な振る舞いについて様々な知見を得ることができた。さらに強磁場下の測定により、より詳細な磁気構造や反強磁性相互作用の議論を進展させることができた。また、核共鳴前方散乱の詳細な温度変化や強磁場下での測定を行い、単結晶試料における磁気構造の議論についても進展させることができた。 さらに、磁気秩序を生じる温度より高温側で線幅の広がりが観測されるなどの情報も得ることができ、近年報告されたネマティック秩序との関連性についても新たな知見について議論を深めることができた。また、テルル125のメスバウアー分光を行い、テルルの磁気モーメントの評価を初めて可能にするなどの成果が出つつあり、さらにテルルのメスバウアー分光を強磁場下で行うという、これまでに例のない実験を進展させ、鉄だけでなくテルルにおいての磁気モーメントの測定と電子状態との関連性などの議論を進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄テルル化合物試料作製方法については、多くの試行によりほぼ確立できている。鉄57やテルル125で同位体濃縮した試料については、少量の試薬で大きく良質な単結晶を育成することが望ましいため、さらに試行を重ねることで、より効率的な試料作製条件の探索も進展しつつある。 鉄57メスバウアー分光およびテルル125メスバウアー分光については、おおむね順調に測定を行うことができ、さらに詳細な解析を行うことで議論が進展しつつある。 放射光を用いたメスバウアー分光についても進展状況は良好であるが、より測定の効率を上げるためには、より大きな純良単結晶の作製が必要であり、さらに実験条件の向上のための工夫や、実験装置の改良が進展しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄テルル化合物については、さまざまな条件において純良な試料の、より効率的な作製手法の向上を目指す。 また、強磁場下については解析が進展しているものの、より詳細なデータ解析を行うため、プログラムの改良を行う。 放射光核共鳴散乱実験においても、効率的な測定のための実験手法の改良や測定装置の向上、検出器系の改良を行い、限られたマシンタイムにおいてより多くの測定や成果が出せるような測定系の開発研究を行うとともに、作成した良質試料を用いた研究を進展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料作製の準備に重点を置いたため、費用のかかる実験装置の購入などを次年度に持ち越しており予算執行に繰越金額が発生しているが、実験の進展に影響はない。 実験装置の向上のため、検出器や測定系、試料位置調整などの装置の購入を次年度中に行う予定である。また試料作製のための高価な安定同位体の購入を行い、より効率的に実験を進展させる予定である。
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Research Products
(5 results)