2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高根 美武 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40254388)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超伝導近接効果 |
Research Abstract |
研究計画に基づいて,典型的なディラック電子系であるグラフェンに対する超伝導近接効果について検討した.具体的には,バリスティックなグラフェンに二つの超伝導電極を平面的に結合させた超伝導/ディラック電子/超伝導接合系に着目し,二つの超伝導電極間に生じるジョセフソン電流を求めるための公式を解析的に導出した.理論的な枠組みとしては準古典グリーン関数法を用いた.この公式にはグラフェンと超伝導体間のトンネル結合強度を特徴づけるパラメータが含まれており,弱結合極限から強結合極限まで統一的に取り扱うことができる.また,接合界面におけるフェルミ波数の不整合の影響を取り込むことにも成功した.さらに,単層グラフェンは勿論のこと,任意の層数のグラフェンに対して適用できる.この公式に基づいて数値計算を実行し,トンネル結合強度やフェルミ波数の不整合,およびグラフェンの層数がジョセフソン臨界電流に及ぼす影響を詳細に検討した.特に,弱結合領域において,これまで報告されていない特異な振る舞いが現れることを明らかにした.これらの成果は本論文として出版済みである. 関連する発展的な問題として,トポロジカル絶縁体表面に現れるディラック電子系の振る舞いについて検討を進めた.特に,球あるいは円柱のような曲がった表面上のディラック電子に対する有効方程式を導出し,それらの振る舞いに対してベリー位相が重大な影響を及ぼすことを明らかにした.これらの成果も三編の本論文として出版済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた計画(グラフェンを介したジョセフソン効果に関する解析)は完全に遂行することができた.また,トポロジカル絶縁体表面に現れるディラック電子系に関する発展的な課題にも取り組み,具体的な成果を挙げることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,主としてトポロジカル絶縁体表面に現れるディラック電子系に対する超伝導近接効果について検討したい.具体的には,トポロジカル絶縁体に超伝導体を結合させた系において,近接効果の影響下におけるディラック電子の振る舞いを記述する有効理論の導出を目指す.微視的な3次元モデルから出発し,従来広く用いられている半現象論的な2次元モデルの正当性を検証する. また,グラフェン/超伝導接合におけるアンドレーフ反射の振る舞いを再検討する.従来の研究では,グラフェンと超伝導体間の結合強度の影響が全く検証されていない.ジョセフソン効果の解析において我々が用いたモデルを採用し,トンネル結合強度がアンドレーフ反射の振る舞いに及ぼす影響を解明する.余裕があれば,曲がったトポロジカル絶縁体表面におけるディラック電子の振る舞いを記述する一般論を構築したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究室の事情により計画していた小型計算機の購入を取りやめたため,その分を次年度に回すことにした.次年度の研究費は,主として旅費(海外での国際会議一件と国内学会二件,および研究会数件)と論文出版費などに支出する予定であったが,これに加えて小型計算機数台の購入にも充当する.
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