2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540375
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高根 美武 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40254388)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / グラフェン |
Research Abstract |
今年度は,グラフェンやトポロジカル絶縁体表面の二次元ディラック電子系に対する超伝導近接効果を記述する有効ハミルトニアンを導出し,その特徴について議論した.得られた有効ハミルトニアンは,ディラック電子系と超伝導体間のトンネル結合の強さをパラメータとして含んでおり,両者間における電子の往来によって生じる動的効果も適切に反映している.従来の理論的な枠組みではトンネル結合の強さが反映されておらず,また動的効果も無視されていることを考慮すれば,著しい進歩とみなすことが出来る.また,有効ハミルトニアンに基づいて,近接効果の下でのディラック電子系の状態密度の解析的な表式を導出した.この表式には,従来の枠組みでは記述できなかった超伝導体のギャップ端における特異性の影響も適切に取り込まれている.このように導出した有効ハミルトニアンは,近接効果ディラック電子系を記述する新しい枠組みとして有効であると考えられる. その他に関連する問題として,トポロジカル絶縁体の表面に現れる二次元ディラック電子系に関して,表面の折れ曲がりの効果や有限サイズギャップの振る舞いについて解析し幾つかの成果を挙げた.特に,湾曲したトポロジカル絶縁体表面上の低エネルギー電子系に対する一般的なディラック方程式の導出に成功した.この定式化は任意の曲がった表面に適応できるなど汎用性に優れている.さらに,スピン量子化軸の役割や境界条件の与え方に対して新たな知見を提供しており,ディラック方程式に関する基礎概念の整理に役立つと期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては,二次元ディラック電子系に対する超伝導近接効果を記述する微視的な有効ハミルトニアンの導出が最も重要な課題と考えていた.今年度この課題を達成し本論文として出版することができ,さらに発展的な課題にも取り組むことができたので,当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最も重要な課題は達成したので,関連する話題のうち将来性のある問題の解析に注力したい.特に,弱いトポロジカル絶縁体表面に現れる,二次元ディラック電子系における偶奇性の発現機構の理論的な解明を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通り予算を執行したが,不可避的な誤差として数百円の次年度使用額が生じた. 次年度使用額は少額であり,基本的な使用計画に変更の必要はない.物品費および旅費等に充当する.
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