2012 Fiscal Year Research-status Report
磁気秩序を示す新奇近藤半導体セリウム1-2-10系の基底状態の解明
Project/Area Number |
24540376
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
世良 正文 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40196978)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近藤半導体 / CeT2Al10 / 磁気秩序 / スピンギャップ / ジグザグ鎖 / 2次元性 |
Research Abstract |
最近発見された近藤半導体CeT2Al10(T=Ru,Os,Fe)はT=Ru,Osにおいて奇妙な反強磁性秩序を示すことが明らかにされ、現在盛んに研究されている。我々のグループでは、広島大学黒岩グループとの共同研究としてSPring-8においてLnT2Al10の室温での結晶構造を詳細に調べ、結晶の骨格を形成するT-Alボンドのa,c方向のジグザグ鎖がこの系の物性を大きく支配していることを明らかにした。またランタノイド収縮からのCeにおけるずれが、a方向で最大であり、b方向のずれは非常に小さいことを発見した。これらの結果からc-f混成が異方性が存在し、a方向で最大であり、b方向では非常に小さいことを示していることが明らかになった。NMR測定から、転移温度以下でのCeのa方向の最近接のAl2サイトの内部磁場が他の4つのAlサイトに比べ異常に大きいことを発見し、これがa方向の強いc-f混成の結果であると結論した。また物性研・近藤らとの共同研究として強磁場磁化曲線を測定し、a方向の強いc-f混成が強いとして統一的に理解できることを示した。c-f混成の異方性に関する情報を得るため、a,b,c方向に電流を流し、その方向に磁場をかけた状態で電気抵抗の圧力依存性をしらべ、c-f混成の異方性がaが最大で、bが最小であることを示す結果を得た。CeRu2Al10の結晶場スキームがドイツのStrigariらにより決定されたのに伴い、異方的交換相互作用を導入した分子場計算を行うことにより、磁気的性質をよく再現することができた。また、a方向の磁化率の60K以下での計算からのずれの起源をa方向のc-f混成がこの温度以下でさらに成長し、TR0以下の奇妙な反強磁性秩序を引き起こしていることを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単結晶作成の条件が決まり、単結晶の量産体制が整ったことが第一にあげられる。ただし、単結晶の方位出しに時間がかかるという問題は残されたままである。
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Strategy for Future Research Activity |
CeT2Al10の研究はまだ始まったばかりであり,今後なすべき実験は山積みである。今後の研究の推進方策は以下の通りである。異方的なc-f混成が奇妙な反強磁性秩序の起源であると考えているが,現在までの議論はまだ定性的なものである。ダイレクトに起源を決定づける実験結果を出すことも困難である。今後の方策としては,多方面からの実験,特に異方性に注目した実験を行うことが不可欠である。現実には,c-f混成が圧力に敏感であることを考慮し,元素置換効果とその圧力効果を中心に研究を推進することを考えている。また,われわれのグループで実験できないミクロな測定(中性子散乱,ミューSR,メスバー効果,光学電導度,X線,dHvA効果など)を国内外の研究グループと共同して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)