2013 Fiscal Year Research-status Report
磁気秩序を示す新奇近藤半導体セリウム1-2-10系の基底状態の解明
Project/Area Number |
24540376
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
世良 正文 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40196978)
|
Keywords | 近藤半導体 / CeT2Al10 / 反強磁性秩序 / スピンギャップ / 電荷ギャップ / ジグザグ鎖 / 2次元性 |
Research Abstract |
2009年に発見された近藤半導体CeT2Al10(T=Ru,Os,Fe)はT=Ru,Osで反強磁性秩序を示すことが明らかにされ,盛んに研究されている。従来の近藤半導体と異なり磁気秩序を示す近藤半導体であり,その磁気秩序は非常に奇妙な性質を持っているが,そのミクロな起源・機構は未解明である。この一年間における研究実績は以下の通りである。 ①CeRu2Al10のRuサイトを少量(3%)のRhで置換すると,困難軸のc方向を向いていた反強磁性モーメントが磁化容易軸のa方向を向くようになることを磁化率,強磁場磁化曲線の測定から明らかにし,H//aのもとでスピンフロップ転移を観測し,強磁場下での磁気相図を完成させた。この結果に基づき,強いa軸方向のc-f混成が弱められ,反強磁性モーメントがa方向を向くようになった,と結論した。 ②CeRu2AL10ではc軸を向いていた反強磁性モーメントが,H//cのもとでスピンフロップ転移を起こし磁化最困難軸のb方向を向くこと,La置換でb軸方向を向くこと,さらにLa置換でb軸を向いた反強磁性モーメントが圧力をかけることにより,容易にc軸方向を向くことを発見した。このような異常な磁気異方性は通常のクーロン相互作用では説明できず,異方的はc-f混成が起源である,と結論した。 ③反強磁性体GdT2Al10(T=Ru,Fe)の磁気的性質を調べた。T=Ruは反強磁性転移温度と常磁性状態への臨界磁場が同程度の普通の反強磁性体であるが,T=Feでは,反強磁性転移温度がT=Ruのものとほとんど同じであるにもかかわらず,臨界磁場がT=Ruの半分程度であるという異常を見出した。Gd間の交換相互作用が温度に依存し,温度低下とともに弱くなること仮定し分子場計算を行い,これらの異常の起源がFeのもつ弱い磁気的性質による,と結論した。 ④LLBのMignotらとの共同研究としてCeFe2Al10の非弾性中性子散乱実験を行い,分散をもつ磁気励起を観測し,スピンギャップの起源を議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単結晶作成が順調に進み,また,中性子散乱,高精X線回折,ミューSR,メスバー効果,ラマン散乱,光学伝導度など多くの研究者との共同研究が行われるようになったことが当初の計画以上の進展を後押ししている。
|
Strategy for Future Research Activity |
CeT2Al10の研究は,発見から5年が経ったが,奇妙な性質のミクロな機構は未解明のままであり,今後なすべきことは山済み状態である。今後の計画は以下の通りである。①スピンギャップ,電荷ギャップの形成の起源を明らかにする。そのため,CeT2Al10のTサイト置換効果を様々な角度から調べる。②CeT2Al10の奇妙な反強磁性秩序の起源を明らかにするため,Ceサイトを他の希土類元素で置換した系を調べ,Ce間相互作用が異種希土類元素起こす相互作用の起源が通常の交換相互作用ではないことが明らかになると考えている。③の磁気モーメントによりどのような影響を受けるかを調べる。Ceと異種希土類元素のモーメントが一体となって磁気秩序を形成すれば,通常の交換相互作用が反強磁性秩序と考えられるが,Ceと異種希土類元素が独立に磁気秩序を起こせば,CeT2Al10が反強磁性秩序をCeT2Al10では異方的c-f混成が重要な役割を果たしていることが今までの研究から明らかにされているが,上記①,②の置換系サンプルの圧力効果を調べ,異方的c-f混成に関する情報を収集し,CeT2Al10の反強磁性秩序の起源解明に役立てる。④共同研究として,中性子散乱,ミューSR,メスバー効果,ラマン散乱,光学伝導度の実験を継続する。
|
Research Products
(7 results)