2013 Fiscal Year Research-status Report
局所相関と電荷移動の自由度がもたらす新しい量子現象
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24540378
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334346)
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Keywords | 量子臨界現象 / 準結晶 / 近似結晶 / 重い電子系 / 臨界価数ゆらぎ / Ybクラスター |
Research Abstract |
最近、重い電子系準結晶Yb15Al34Au51において、低温で一様磁化率とNMR核磁気緩和率が発散的振る舞いχ~T-0.51~(T1T)-1を示し、電気抵抗率は温度に比例し(ρ~T )、電子比熱係数はC/T ~ -log T のように低温で増大し、 従来型のスピンゆらぎの量子臨界現象とは異なる新しいタイプの臨界性を示すことが観測された。これらの各物理量の振る舞いは、Yb系結晶のYbRh2Si2やbeta-YbAlB4で観測された非従来型の量子臨界現象と共通であり、Ybの臨界価数ゆらぎの理論により、よく説明される。このことは、Ybの臨界価数ゆらぎが強い局所性をもつために、格子が周期性をもつか、準周期性をもつかにはよらない可能性を示唆しており、Ybの価数ゆらぎを起源として新しい普遍性クラスが形成されている可能性が高いと考えられる。 Yb15Al34Au51は零磁場・常圧下で量子臨界現象を発現しているが、本研究ではその理由を洞察することを目的として、準結晶と近似結晶の基本格子構造を構成する、同心円状のシェル構造をもつクラスターについて、電子状態を記述するミニマルモデルを構築し、基底状態の相図を求めた。その結果、Ybの価数転移の量子臨界点が相図上で斑点状に出現し、量子臨界領域が互いに重なり合って広大な量子臨界領域が出現することを見出した。これにより、この物質で観測された圧力に対してrobustな量子臨界性が、臨界価数ゆらぎの観点から自然に説明されることがわかった。また、このことがチューニングなしに量子臨界物質が実現している事実を理解する鍵を握ると考えられる。また、近似結晶においても温度-圧力相図中で量子臨界領域が存在することが予言される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近、新たに発見された、重い電子系準結晶が示す、非従来型の量子臨界現象について、Ybの臨界価数揺らぎの観点から、統一的な理解ができることが、本理論研究の遂行により明らかとなった。また、圧力下でのrobustな量子臨界性の機構の解明など、新しい知見を得ることができており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
周期的および準周期的格子構造をもつ重い電子系物質について、圧力・磁場を制御することにより、YbやCeの価数転移の量子臨界点をチューンすることができると考えられるので、これらの実験を実験家と協力して推進して、本理論研究との比較・検証を行う予定である。
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