2013 Fiscal Year Research-status Report
二重ペロブスカイト型マンガン酸化物の室温近傍での巨大磁気誘電現象の探索
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24540380
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山田 重樹 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (50312822)
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Keywords | 単結晶作成 / 電気・磁気相図 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究課題では、さまざまな希土類元素に対する二重ペロブスカイト型マンガン酸化物の純良な単結晶体の作製が最も重要な鍵となる。本課題の申請時にすでに SmBaMn2O6 の作製に成功しており、そのノウハウを生かし1年目には TbBaMn2O6 の作製に成功した。さらに、去年度はイオン半径が最も小さい YBaMn2O6 と、電気・磁気相図において多重臨界領域に一致する NdBaMn2O6 の作製を挑戦し、いずれも作成に成功し、それらに物性測定をおこなった。SmBaMn2O6や TbBaMn2O6 はSm や Tb が磁性を持つため、Mnの磁性との分離が難しく定量的な考察には不確定な部分が含まれてしまう。それに対して、Yは磁性を持たないため純粋にMnの磁性を測定することができる。実際に、YBaMn2O6の磁化曲線はSmBaMn2O6の磁化曲線において、いくつかの仮定のもとSmの寄与を除いたものと一致した。これは、SmBaMn2O6の考察が正しいものであることを示している。また、NdBaMn2O6 では、磁化の温度依存性が多結晶体の物とは大きく異なることを発見し、さらに特異な光学特性を有するという傍証を得た。さらに、TbBaMn2O6 と NdBaMn2O6 については単結晶体を用いたX線回折測定を行い現在そのデータを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、さまざまな希土類に対する二重ペロブスカイト型マンガン酸化物の単結晶体を作製し、その磁性と電気特性を通して本物質の物性を明らかにすることが柱となっている。特に、誘電性に特異的な性質を示すことが期待されることから、誘電性の測定も重要な柱となっている。現時点において、単結晶体の作製はかなり順調に進んでおり、それに伴う物性測定も行っている。ただし、誘電性に関しては、本物質が電気抵抗が200 K 近傍においても数百Ωcm と誘電体と呼ぶには小さすぎることから大変難航している。そこで、最終年度では、より低温での磁気転移点において誘電測定を行うことを試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本物質群については、この二年で SmBaMn2O6、TbBaMn2O6 、 NdBaMn2O6 の単結晶X線回折測定を行っているので、今年度はそれらのデータの解析を完了させ、学会発表や欧文論文誌への投稿を通して、結果の公表を行う。物性測定においては、さらに他の希土類元素に置換した系における単結晶体の作製を行い、それらを系統的に測定することで、正確な電気・磁気相図の作製を行う。また、現在特に NdBaMn2O6 について観測されている特異な光学特性について詳細に測定を行う予定である。そのためには、MnO2 面内でも結晶軸の揃ったシングルドメインの単結晶体の作製が必須となる。そこで、この結晶軸をそろえる方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では低温、強磁場での測定が必須となるため寒剤として液体ヘリウムが必要ある。しかし、近年の液体ヘリウムの供給不足による価格高騰により、研究計画を遂行するために必要な量の液体ヘリウムが確保できるかが不透明な状況になっている。そこで、研究課題を滞りなく遂行するために、当初購入を予定していた消耗品などを代替え品などで補うなどをして、急激な価格上昇で液体ヘリウムの購入が困難になった場合に備えていた。しかし、現時点では本申請費を用いて液体ヘリウムを購入する状況にまではならず、繰り越し金をして計上することとなった。最終年度では、それらの状況を見越しながら計画的な執行を行うつもりである。 今年度は本申請課題を遂行するために使用している、低温強磁場下での電気・磁気測定装置に液体ヘリウム再凝集装置を取り付ける予定であるため、液体ヘリウムの価格変動が研究計画に及ぼす影響をかなり低減させるられることが期待できる。つまり、年度当初より予算を計画的に執行できる。さらに今年度が本申請課題の最終年度であり、研究成果の報告などを考え、実験を年度当初より積極的に行う必要があるため、実験に関する予算執行を早めに行い、予算の過不足が生じないように研究計画を立てる予定である。
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