2012 Fiscal Year Research-status Report
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24540384
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Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Research Institution | Tokyo University of Science |
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Principal Investigator |
矢口 宏 東京理科大学, 理工学部, 教授 (30314173)
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| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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| Keywords | グラファイト / 密度波 / 強磁場 |
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| Research Abstract |
グラファイトは、低温強磁場下（20-30テスラ以上）で、電荷密度波またはスピン密度波相と考えられる磁場誘起相転移を逐次的に起こすと考えられている。しかしながら、従来の研究において、これらの転移は磁気抵抗の絶縁体転移的な異常として観測されるものの、密度波形成の直接的な証拠に乏しい。そのため、当該年度においては、パルス強磁場を用いて、グラファイトにおける磁場誘起密度波多重相に関する理解を深めることを目的とした。
特に、グラファイトの密度波のダイナミクスを調べることを意図して、非線形伝導の観測を目指した電流電圧特性の測定から開始した。横磁気抵抗においては、過去の研究で報告されているような非線形伝導の観測に至っておらず、試料依存性等を含めて、今後の更なる研究が必要である。一方、縦磁気抵抗に関しては、従来、電流電圧特性が調べられていなかった温度・磁場領域まで測定を拡張し、密度波のスライディングのためと考えられる非線形伝導を観測した。しかも、これまでは約53テスラ以上の磁場領域では、密度波相から正常相へとリエントラント転移していることが確実視されていたが、53テスラを越える磁場でも、十分に低温においては明瞭な非線形伝導が観測された。
このことから、より強磁場域での新しい相の探索（最高で70テスラ超級のパルス磁場を使用）を緊急の課題と考え、約75テスラまでのパルス強磁場を用いて、縦磁気抵抗を中心に調べた。その結果、十分に低温では、53テスラを越える磁場でも、何らかの絶縁体的な秩序相を形成している可能性が高いと考えられる結果を得た。強磁場中でのランダウ準位の計算と総合して考えると、この秩序相は、スピンの異なる電子とホールのサブバンド間のネスティングによる励起子相の可能性が有力視される。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、低温強磁場中の磁場誘起密度波相において電流電圧特性を調べ、縦磁気抵抗に関しては、密度波のスライディングのためと考えられる非線形伝導を観測した。その際に、正常相へとリエントラント転移していることが確実視されていた53テスラ以上の磁場下でも、十分に低温においては明瞭な非線形伝導が観測された。この結果は、そのような強磁場領域においても、何らかの秩序相が形成されている可能性が強いことを示唆しており、その意義の重要性から、より強磁場（70テスラ超級のパルス強磁場）を用いた測定の拡張を、当初予定していたトンネル接合の作製をやや遅らせることよって優先して行い、53テスラ以上での強磁場域での秩序相の形成の可能性に関して、更なる知見を得つつある。
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| Strategy for Future Research Activity |
従来は、正常相に入っていると考えられていた強磁場領域においても、密度波等に特有の非線形伝導が観測されたことから、研究の順序の多少の入れ替えを行い、70テスラ超級のパルスマグネットを用いた強磁場での新しい秩序相の探索を優先させている。当面は、より詳細に、70テスラ程度までの強磁場での探索を進める。また、秩序相の理解を深めるために横磁気抵抗における非線形伝導についても継続して研究を行う。
その一方で、トンネル接合の作製に本格的に移り、密度波相のエネルギーギャップの観測により、より直接的な密度波相の形成の実験的証拠を得ることを狙う。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同利用のパルス磁場の実験を優先させたこともあり、当該年度の研究費の10パーセント程度の金額を繰り越すこととなった。次年度においてこの研究費は、主として、寒剤代を中心とした消耗品代として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
