2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540387
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30396519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椎八重 航 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20273253)
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Keywords | ジョセフソン効果 / 磁壁 / シャピロステップ / ブリージングモード |
Research Abstract |
磁壁の幅が振動する状態(ブリージングモード)を、高精度に検出する方法と取り組んだ。磁壁は多くの電子スピンの集合であり、粗視化された微小磁化の集まりである。磁壁の運動が集団座標で記述されることは良く知られている。一次元系の場合、磁壁の位置と磁壁面の傾きが集団座標に相当する。これらの変数は、困難軸異方性やピン止めポテンシャルに対して、磁壁の厚みが一定と見なせる場合に成り立つ。しかし、磁壁の運動には、常にエネルギーの散逸が伴う。この散逸まで含めて磁壁の運動を考察すると、磁壁の幅も時間と共に変化して良いことが分かる。特に、磁壁がポテンシャルに束縛されている場合、ブリージングモードが数値計算を用いて示されており、それをマイクロ波発信に応用しようとする提案もある。 磁壁の位置の振動と、ブリージングモードの両者が存在する場合について、昨年度の成果を基礎に据え、電流電圧特性を計算した。強磁性体で隔てられた超伝導体の接合を考え、その強磁性体中で磁壁が運動している場合の電流電圧特性を、等価回路模型を用いて導いた。その結果、磁壁の振動数の整数倍に比例定数をかけた電圧のところで、電流電圧特性が階段状に変化しうることを見出した。その比例係数は、プランク定数と素電荷という基礎物理定数のみで決まるため、電圧を測定することで、これらの振動数を、高精度で決定出来る。特徴的な点は、磁壁の位置が振動している場合に比べ、ブリージングモードの方が、変化が遥に大きいことである。ブリージングモードは、理論的に存在が指摘されているが、実験で確認されていない。一方、磁壁駆動の臨界電流の大きさを決めていると主張する研究もあり、ブリージングモードの存在を確認することは重要である。本年度の成果は、未だ実験で確認出来ずにいる磁壁のブリージングモードを観測する有力な手段になり得るものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁壁の変形運動に関する高精度な観測原理を見出すことができた。特に、単なる平面が振動している場合に比べ、幅が変形する運動の方が、より高感度に観測されうることが分かった点が興味深い。そして、その結果を認知度の高い学術誌に投稿して受理され、平成26年度には確実に出版される予定である。また、国際会議や学会で、招待講演2件を含め多数成果発表を行った。従って、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、単一の平面状の磁壁の単振動運動と磁壁の幅の変形運動に関する高精度な観測原理の提案に至った。最終年度を迎えるにあたり、より一般的な運動状態や、磁壁構造が磁気渦などの場合に、その運動を超伝導体と組み合わせて、高感度高精度に観測する手法へと発展させていきたい。磁気渦構造に関して、共同研究者が数値計算手法を確立させている。その数値計算手法と組み合わせて、磁気渦構造の運動に関する高精度かつ高感度に測定する手段の提案に結び着けていく。磁気渦構造は、ある種の金属では格子を組むことが知られており、それらを応用する研究が急速に進展していることから、その運動を高精度かつ高感度に測定する手段の提案は重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
変形する磁壁運動に関する研究が当初の計画より少し遅れ、計算機を導入する機会を逃してしまったため。 より複雑な磁壁構造を扱うためには、数値計算が不可欠である。共同研究者の数値計算プログラムは盤石な状態にある。そのプログラムを最大限に活用し、磁壁構造の実空間実時間シミュレーションを行い、更にそれらを超伝導接合を用いて、高感度かつ高精度に観測する原理へと結び付けていく。そのために大容量記憶装置を搭載した計算機を導入する。また、得られた成果を、日本のみならず世界へと発信すべく、国際会議などへも積極的に参加し、研究成果の周知に努めていく。
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Research Products
(17 results)